慢性頭痛の治療戦略

                   
市立豊中病院 神経内科
                   
主任医長  高瀬 靖 
慢性頭痛は病気である(一般の方、あるいは医師ですら頭部CT、MRIなど検査をして異常がなければ病気とは思っていない、あるいは気持ちの問題と思っている方がかなりおられるのでは?と思われる)。ただし慢性頭痛のみでは命を落とすことはないため非常に軽視されている。慢性頭痛は鎮痛剤を飲んで様子をみていればいい、あたまいたごときで仕事を休むとは何事だ、医者にかかるような病気ではない、という考え方が社会一般の常識となっており、だからこそ、非常に多くの患者さんが慢性頭痛で悩んでいる。よって頭痛を正しく診断し、正しく治療、コントロールしていくことが患者さんの日常生活、社会生活の質を向上するために非常に大切である。
頭痛の診断基準は国際頭痛学会(1988年)によりはっきりと定められており、日本人で頭痛持ちの人は、全人口の1/4から1/3といわれている(北里大学の全国調査によると本邦の一般人口における頭痛の頻度は、片頭痛は8.4%、緊張型頭痛は22.4%と報告されている)。この2年間に、塩酸ロメリジン内服、スマトリプタン皮下注射が使用可能となり、また最近、ゾルミトリプタン、スマトリプタン内服の認可がおり、さらにその他の優れた頭痛発作抑制薬、頭痛予防薬が今後3年以内に日常臨床に使える予定もある。これらの薬が発売され、慢性頭痛の治療は大きく変わろうとしている。ひどい片頭痛発作(1回の発作が3日間近く続く)が月に2回以上ある、毎週のように片頭痛発作が1回は起こる、また毎日のように緊張型頭痛に悩まされて(慢性緊張型頭痛)、一般的治療の効果のない患者さんは頭痛予防薬を服用したほうが良いと思われる。ここまでひどくない患者さんは頭痛発作時の発作抑制薬のみでコントロール可能である。

                         平成13年9月22日
                         於 奥香落山荘

                           
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