アレルギー性鼻炎の治療
         奈良県立医科大学 耳鼻咽喉科教室
            助手 金田 宏和
アレルギー性鼻炎の3主徴候はくしゃみ・はなみず・はなづまりで、鼻汁の性状は水様性(水の様にさらさらして無色透明)である。しかし、これは風邪初期の急性鼻炎の症状と類似するが、アレルギー性鼻炎では目のかゆみや流涙の症状が加わり、咳や発熱などの風邪症状がないことで鑑別される。しかし、両者とも鼻以外の症状を伴わないこともあり診断が困難な場合も多く、このような場合に鼻汁塗抹検査が有用である。これは採取した鼻汁をHansel液(鳥居薬品製エオジノステイン)で染色して鏡検する検査で、好中球は青色に染まり、好酸球は赤色に染まる。急性鼻炎では鼻汁中の好中球が増加し、アレルギー性鼻炎では好酸球が増加するため鑑別が可能となる。問診により通年性であればダニ、ハウスダストなどが抗原として関与していることが推測され、季節性であればスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなどの花粉が推測される。しかし、これら両者の抗原が重複している場合も少なくないためRASTなどの血液検査で抗原を特定し、積極的に抗原から回避することが重要である。薬物治療ではスギなどの花粉症であれば花粉飛散開始日の約2週間前より抗アレルギー薬を内服する初期治療が一般的になってきている。これによってシーズンを通じて症状が軽くすむ利点があるが、気象条件により症状の強い日はステロイドまたは抗アレルギー点鼻薬や抗アレルギー点眼薬を併用する。来院時すでに症状のひどくなっている場合は速やかな症状の軽減が必要であるが、抗アレルギー薬の内服のみの治療では即効性があまり期待できないため、ステロイド点鼻薬や抗アレルギー点眼薬の併用とともに2週間程度のステロイド含有薬(セレスタミン剤)の頓用使用も必要となる。ダニ、ハウスダストが原因する通年性アレルギー性鼻炎は長期間の薬物使用が必要となるため、抗アレルギー薬の内服は症状の強い時期のみに使用し、ステロイドまたは抗アレルギー点鼻薬でコントロールするのが理想的である。

                 平成14年5月18日
                  於 美榛苑 
                               
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