外来での市中肺炎の管理
         天理よろづ相談所病院呼吸器内科  田口 善夫

 近年、呼吸器感染症は様々な点で注目されている。一つにはわが国が超高齢化社会の入り口にさしかかり、高齢者の増加とともに呼吸器感染症が増加したことである。さらには Legionella や Chlamydia pneumoniae などの新しい感染症ばかりでなく、ペニシリン耐性の肺炎球菌(PRSP)、メチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)などの耐性菌の問題や、担癌患者などいわゆる compromized host が増加し呼吸器感染症の重要性が増してきていることなどである
 また、診断方法についても、従来の喀痰検査法などの古典的な検査法に加えて、PCRなどの遺伝子学的手法による診断など、新しい診断手法が導入され、感染症を考える上で大きな変化が生じている。
 しかし実際の臨床上市中肺炎の外来管理においていは起炎菌同定の重要性はそれほど大きな問題ではないのが現状である。また現在でも市中肺炎における細菌の三大起炎菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ・カタラーリスである。また近年異型肺炎の重要性が指摘されており、最近の検討では高齢者において肺炎クラミジアが予想以上に多いことが明らかにされている。さらには、誤嚥の関与した肺炎の頻度も予想以上に高いことが明らかとなってきており、これらの病態に即した治療並びに指導が重要である。
 また発症予防の面からワクチン接種の有用性も指摘されており、今回の市中肺炎の講演ではこれらの点について自験例を交えながら述べる。

                        H14.7.27
                        於 御杖村開発センター

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