消化器疾患とうつ・不安
奈良県立医科大学 消化器・内分泌代謝・心療内科(第三内科)
竹川 隆
1) 心身症とは
身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的、機能的障害が認められる病態をいう。ただしうつ病や神経症など、他の精神障害に伴う身体症状は
除外する。
2)心療内科とは 心身医学の実践
3)消化器疾患とうつ、不安消化器疾患に、うつや不安を伴うことは、非常に多い。(30〜50%)
消化器症状をを主訴として一般内科医を受診する患者は、精神症状そのものを訴えることは稀である。そのためわれわれは、消化器症状をを主訴として受診した患者を診療する場合、うつや不安が背後に存在している可能性を常に意識しておく必要がある。
1)消化性潰瘍
2)過敏性腸症候群 ( Irritable bowel syndrome : 以下 IBS)
3)潰瘍性大腸炎
4)クローン病
5)Functional Dyspepsia (FD)
6)その他
うつの場合は 1)抑うつ気分、2)意欲の欠如、抑制、無感動、3)不安、焦燥などがみられるが、一般内科医を受診する場合には、患者はこれらの精神症状より、消化器症状の方を主に訴える。また身体症状としては睡眠障害、食欲減退、性欲減退、自律神経症状(口渇、悪心、食欲低下、便秘などの消化器症状以外にも神経、筋肉系の症状が生じやすい。消化器症状を主訴とする患者の多くは、いわゆる仮面うつ病のかたちをとるのである。
心身医学的治療
T.向精神薬の使い方
抗不安薬は、不安・緊張感が強い患者や、消化器の機能異常による身体症状がさらに不安を増すととった症例に用いる。抗不安薬としては主にベンゾジアゼピン系を用いる。
うつ症状を訴える患者、および不安に伴ううつを訴える患者には抗うつ薬を用いる。高齢者の錐体外路障害、女性の生理不順に注意すれば、ドグマチール 100-150rをつかう。他に、レスリン、デジレル、SSRIであるデプロメール、ルボックス、パキシルを吐き気、眠気に注意して使い慣れることが必要である。うつ病は、自殺願望がある時期存在することが多い。危険を感じたら、心療内科か精神科へ紹介が必要である。
U.一般心理療法
受容・共感・支持がすべての心理療法の基礎である。
最後に強調したいのは、症状に変化があれば再度必要な検査をすべきである。重大な器質的疾患が発生している可能性がある。
平成15年2月1日 於 美榛苑
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