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平成20年1月26日 「宇陀市立病院消化器内科の現況と今後の展望」
宇陀市立病院 内科 城井 啓 先生
 

 平成19年度より宇陀市立病院に消化器内科が新設されてからの検査・治療成績と今後の展望・課題について提示した。

 上部消化管内視鏡検査については経鼻内視鏡の導入により検査時の苦痛を緩和するとともに、経鼻内視鏡を用いてのイレウスチューブ挿入や胃瘻交換を新たに開始した。また平成19年4月1日〜10月31日の期間で13件の早期胃癌を発見しうち12件および1件の胃腺腫に対してESD(endoscopic submucosal dissection)を行った。4月〜12月の治療成績は胃瘻造設17例、胃瘻交換29例試行し、内視鏡止血術は23例、静脈瘤治療は7例(EVL5例、EIS2例)であった。

 下部内視鏡検査では必要に応じて経口・経肛門的に小腸ダブルバルーン内視鏡検査が可能となった。また4月〜12月で全大腸内視鏡検査275例、うちポリペクトミー81例、sigmoid fiberscopy45例と件数の増加を認めている。

 胆道系検査・処置数は緊急症例に対応することが可能となり、上記9カ月でERCP総数55例、うちENBD16例、EBD3例、EMS10例、EST6例、8例、また経皮処置もPTGBD5例、PTBD8例、経皮ステント6例と大幅増となっている。

 肝癌治療は10月以降に血管造影設備を設置することでTACE(transcatheter arterial chemo-embolization)が可能となり、RFA(radiofrequency ablation)とともに、より集学的治療が可能となった。またB型、C型慢性肝炎に対しては抗ウイルス薬やインターフェロン療法を積極的に取り入れている。

 現在担癌患者がhigh quality of lifeを継続しながら治療の継続を可能とすべく外来化学療法室の整備を行っている。

 宇陀市立病院消化器内科としてある程度のレベルの治療が可能となったが、人的資源の不足は否めない。全ての紹介患者を受け入れることは不能であるか、地域医療に貢献すべく頑張っていきたいと思う。