過活動膀胱(以下:OAB)の認知が進んでいる。2002年 国際禁制学会の用語基準でOABの定義が大幅に変更され、尿流動態検査が行われなくてもOABの診断が可能となった。現在では、尿意切迫感を必須項目とし、周辺症状として頻尿(昼間・夜間)が付随する疾患であり、失禁の有無は問わないと定義される。
現在、国内のOABの患者数は疫学的調査で810万人、40歳以上人口の12.4%と推定される。OAB患者の特徴としては、男女とも加齢とともに有病率が上昇するが、実際に医療機関に受診する割合は低いのが現状である。特に女性での受診率は低く、羞恥心やあきらめが主な原因であるため、OABは治る疾患であることを啓発する必要がある。また、OABの診断が容易になった反面、OAB症状を認めるがために、OABと簡単に片付けてしまい他の重要な疾患を隠してしまう恐れがあるため注意が必要である(例えば癌、結石、感染症等)。
OABの診断と治療は、診療のアルゴリズムである過活動膀胱診療ガイドライン(2005年発刊)を基本とする。OABの診断は、IPSS & QOL score、OABSSの簡易診断法や、エコーを使った残尿測定(保険適応50点)が用いられる(残尿測定のエコー検査については、講演後に実演)。
OABの治療は、大別して行動療法と薬物療法、Neuromodulationの3つに分類される。行動療法は、生活指導や膀胱訓練、理学療法が挙げられる。Neuromodulationは、電気刺激療法(保険適応)・干渉低周波療法(保険適用)・磁気刺激療法がある。わが国で一般的なのは薬物療法であり、EBMに基づく治療の中では抗コリン薬が普及している。近年、新しい抗コリン薬が相次いで発売され、各薬剤の特徴を考慮しながら患者にあった薬剤選択が出来るようになった。各種抗コリン薬は過活動膀胱診療ガイドラインでも推奨グレードAとして位置づけされている。
男女性別によるLUTS(下部尿路症状)については、特に男性高齢者ではBPHに代表される排尿障害が代表的であろう。診断としてはIPSS score、OABSS、残尿測定、前立腺推定体積、排尿記録があり、エコーでの残尿測定は治療法の選択に重要である。女性に関しては、POP(骨盤内臓器下垂)、尿道過可動に代表される腹圧性尿失禁の混在に留意する。診断としては、OABSS、残尿測定、排尿記録がある。細かいことであるがプライバシーへの配慮(例えば、検査時の看護師の立会いや羞恥心への配慮等)も大切になってくる。
以上、過活動膀胱(OAB)は、2005年のガイドラインの発行で、特殊な疾患でなく、泌尿器科医のみならず一般医家による診療の機会がますます多くなる疾患である。
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