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平成20年7月00日 「高血圧診療における減塩の重要性と利尿薬の効果」
先生
 

 メタボリック症候群、糖尿病、CKDなどが存在すれば、心血管合併症の危険が増すことは広く知られている。また、メタボリック症候群、糖尿病は腎疾患のリスクでもある。

 心血管疾患・腎疾患の進展に共通するものは高血圧であるため、これらの患者において血圧の管理が最も重要な目標であることは自明である。
 しかし、実際に血圧コントロールが降圧目標値まで良好に行われている患者は半数にも達していない。さらに、血圧は日内変動があることが知られており、血圧コントロールが良好と思われていても、実際は夜間や早朝に血圧が上昇している症例がある。このような症例は血圧の食塩感受性が高いものが多く、減塩を行えば、血圧を低下させるのみではなく、障害された血圧の日内変動を正常化する(non-dipperからdipperへ)ことが期待できる。

 しかし、実際には減塩を厳格に施行することは困難である。利尿薬は、減塩と類似の効果が期待でき、減塩が必要であるにもかかわらず実施が出来ていない患者(特に食塩感受性の高い、腎疾患・糖尿病・メタボリック症候群患者群)にはその有用性が大きい。
 また、利尿薬については、糖尿病新規発症や代謝系への影響が取り上げられているが、ALLHATやメタアナリシスの報告から利尿薬で糖尿病新規発症が増えている背景には、利尿薬とβ遮断薬が併用されている事が関与しているとの見解もある。利尿薬の使用を少量にするとともにARBを併用すれば、その代謝面での不利益はないものと考えられる。

 現在、わが国において、利尿薬は第一選択薬とは考えられていない。しかし、ARBなどのレニン・アンジオテンシン系抑制薬によっても降圧目標に達していない患者に対し、少量の利尿薬を併用することは、強力な降圧効果と血圧日内リズムの正常化による臓器保護効果が期待できる。