関節リウマチ(RA)の有病率は0.6%であり、日常診療において決して希な疾患ではない。RAは対称性の多発性関節炎を主症状とするが全身性炎症性疾患でもあり多彩な関節外症状を伴うことがある。RA患者の寿命は健常人に比して約10年短く予後不良である。
RAの診断にはアメリカリウマチ学会の「RA診断基準」が用いられることが多いが、発症後2年未満のRA診断においては感度が低いため日本リウマチ学会の「早期RA診断基準」がより有用である。診断にはCRP、赤沈、RF定量だけでなく抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体)を測定することもある。抗CCP抗体の感度はRFと同様の約80%であるが、特異度はRFの約30%に比し抗CCP抗体では95%と優れている。RAを疑う場合、手指のXPだけでなく足趾のXPも撮影する。発症早期にMTP(中足指節関節)の骨びらんで確診される例は少なくない。
RAの疾患活動性をCRPや赤沈だけで評価するべきではない。疼痛関節数、腫脹関節数、患者の評価(VAS)も加えて計算するDAS(Disease activity score)で評価する。糖尿病でHbA1c 6.5を目標として治療するようにRAにおいてもDAS 2.6未満を目標に治療する。
診断後できるだけ早く推奨度Aの抗リウマチ薬(DMARDs)であるブシラミンやサラゾスルファピリジンを開始する。開始後3カ月でDASの改善がみられない場合、メトトレキサート(MTX)投与を考慮する。MTXは優れた抗リウマチ作用、関節破壊抑制効果を有し欧米ではRA治療の第一選択薬である。まれに骨髄抑制や間質性肺炎といった重篤な副作用を発症することがあり投与前検査、投与中のモニタリングは不可欠である。
2003年にサイトカインを標的とした生物学的製剤であるインフリキシマブ(レミケードR)、その後エタネルセプト(エンブレルR)、アダリムマブ(ヒュミラR)トシリズマブ(アクテムラR)が承認され、関節炎だけでなく関節破壊に対する高い有効性が証明されている。海外ではそれらの薬剤の生命予後改善効果も報告されている。このような生物学的製剤の登場によりRAの治療目標は劇的に変化した。従来の治療目標は関節炎の鎮静化であったが、臨床的寛解(関節炎がなく、CRP・赤沈が正常:DAS<2.6)、画像的寛解(関節破壊の進行がない状態)、真の寛解(日常生活動作に支障がない状態)、さらには薬剤中止寛解(生物学的製剤だけでなくDMARDsが必要ない状態)が治療目標となった。
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