奈良県医師会医師主導型臨床研究の助成制度について

奈良県医師会 理事 髙見武志

 最近は、日本でも利益相反が言われるようになり、臨床研究の中立性が問われている。
 製薬会社が自社の製品のよい部分だけを発表する過去の臨床研究は無くなり、本当に臨床に役に立つ研究が求められている。学会発表や論文にも必ず利益相反を付けることが義務付けられている。今まで、奈良県医師会は特定の企業の後援を受けてこなかった。この姿勢は今後も続けられるだろう。
 最近、奈良県医師会員より医師主導型臨床研究をしようという申し出があった。同会員は、北和の医師と中南和の医師の交流が少ないこと、大学医局の同門会の交流はあってもオール奈良としての交流があまりないことを危惧していた。大学、病院、開業医はそれぞれ異なる目標をもっており、共通の目標をもつことがあまりなかった。奈良県医師会の役割は、これらの問題点を解決することであると考える。
 病診連携はどこでもされているが、一歩進めて、医師主導型臨床研究に発展させることは重要である。奈良県立医科大学循環器内科との病診連携は10年以上続けられている。
 そこから、糖尿病患者の心血管一次予防としてのアスピリンの役割という医師主導型臨床研究が成功し、アメリカ心臓病協会のレイトブレイキング演題に選ばれ、JAMAという超一流誌に掲載された。これは、全国の参加施設のう
ち、奈良県の開業医が多く参加をした臨床研究である。
 また、日本臨床内科医会では、多くの医師主導型臨床研究が行われてきた。とりわけ、インフルエンザの研究は、国際的にも認められている。これらは、何年間も続いてきた研究であり、開業医を中心に行われたものである。                     これらの研究は、開業医の臨床のレベルを大きく上げたものである。
 あらゆる疾患の一次予防の臨床研究は、開業医でないとできない分野である。二次予防の臨床研究は、大学や基幹病院の間で進んでいる。しかし、一次予防の臨床研究は十分とは言えないのが現状である。ここに、開業医を中心にした臨床研究の意味があると考える。
 それでは、いきなり大規模臨床研究が可能かというとそうでもない。小さな規模の臨床研究から、大きな発見につながるヒントが見えてくるかもしれない。自分がやってみたい研究がでてきても、共同研究者を見つけることもできな
いこともあるでしょう。また、研究費も気にかかるでしょう。このような研究のお手伝いができないかと考えてこの制度を発足させた。

 

 奈良県医師会の医師主導型臨床研究の助成制度の詳細は、奈良県医師会医師主導型臨床研究への支援要綱と、奈良県医師会医師主導型臨床研究への支援要綱細目のとおりです。
 提出書類(申請書)は、奈良県医師会事務局で準備しております。いつでも、御請求ください。
 提出された研究に対し、迅速に審査いたします。
*これらの制度を活用していただき、実りある臨床研究を作り上げることを期待します。そして、講演を聞くだけの生涯教育から、積極的に臨床研究に参加する生涯教育に変えることにより、会員の生涯教育に対する意識も変わるものと信じています。
 新しいエビデンスの構築をめざして、オール奈良で取り組む臨床研究のテーマをお待ちしております。

※問い合せ先  奈良県医師会業務課  ☎ 0744-22-8502