良性発作性頭位めまい症

耳の構造は外側から外耳、中耳、内耳に分けられ、一番奥にある内耳は聴覚を感じる蝸牛(かぎゅう)、平衡感覚を感じる耳石器官と三半規管に分かれています。それぞれは骨の構造の中に内リンパ液という液体が満たされていて、器官同士は接続しており一つながりになっています。

良性発作性頭位めまい症は寝起きや寝返りなど頭の位置を変えたときにおこるめまいです。グルグルと回る回転性めまいが多く、通常は数秒から1~2分で治まります。嘔気や嘔吐を伴うことがありますが、聞こえ、意識や言葉、運動の障害を伴うことはありません。

耳石器官のひとつである卵形嚢(らんけいのう)の耳石が剥がれ落ち、隣にある三半規管に入って(横になっているときは、三半規管が卵形嚢よりも低くなります)溜まってくると、頭部の運動で耳石の破片が三半規管内で移動し、本来の内リンパ液の流動以外の刺激が入力され発症すると考えられています。

耳石の老化、骨粗しょう症によるカルシウム代謝の異常、頭部外傷での内耳への衝撃など耳石が剥がれ落ちやすくなる要因に、入院など長期間の臥床(がしょう)や、同じ姿勢で寝る癖、低い枕で寝る習慣、運動不足などで三半規管へ溜まりやすくなる要因が重なることで発症しやすくなります。

自然に軽快することもありますが、気分不良やめまいが強いとき、症状が持続する場合は、薬による治療や剥がれた耳石を溜まっている三半規管から卵形嚢に戻す頭部運動による理学療法を行います。10~30%程度で再発するといわれており、治りにくい場合手術治療を行うこともあります。