肛門は自分では見えず、他人に見てもらうのも恥ずかしい部位です。自分で病気を判断するのは難しいといえますが、症状によってある程度の推測は可能です。肛門の症状として主なものは痛み、出血、できものになります。
肛門の痛みは、まず痔を思い浮かべるでしょう。出血を伴うことも多いです。痔はいぼ痔といわれる痔核、切れ痔といわれる裂肛(れっこう)が代表的なものです。痔核は肛門の外にできる外痔核と、内側(奥)にできる内痔核があります。痛みを感じる時は外痔核、又は内痔核が肛門から脱出したもの(脱肛)が考えられ、肛門にいぼ状のものを認めます。裂肛は肛門の組織が裂けて生じるもので、肛門を触っても何もありません。それら以外では肛門周囲膿瘍があります。肛門付近の皮膚の奥に膿(うみ)が溜まった状態のことで、排便時に関係なく痛みを感じ、一部に押さえると強い痛み(圧痛)を認めます。痔ろうはこれが腸と交通してしまう病態になります。
痛み以外の主な症状は出血でしょう。痛みを伴わない出血は、肛門の奥にある内痔核の可能性が高いですが、大腸の炎症や、癌の可能性もあります。
痛みも出血もなく、肛門にできものを触る時は、皮膚が余った皮垂(ひすい)や、肛門ポリープ等が考えられます。良性の疾患のことも多いのですが、悪性の場合や、感染症が関係していることもあります。
肛門の病気は、痔の軟膏等のみで軽減することもあります。しかし実際の診療でも肛門を観察すると全く違う病態の時もありますし、手術等の処置でないと治癒しないものもあります。特に症状が強い、悪くなっていると感じれば必ず肛門科、又は外科を受診してください。