マダニ媒介-重症熱性血小板減少症候群-

近年、山間部の過疎・高齢化で、森林環境が悪化したため、野生動物が増加し、その獣害が問題となっています。また野生動物から血を吸って生きているマダニ類も、春から秋にその活動範囲を身近な里山まで広げ、マダニに咬まれる人が増えています。マダニは病原体を持っていることがあり、咬まれるとマダニ媒介感染症になることがあります。
その中に、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と言われる病気があります。SFTSは平成25年に初めて確認された、マダニに咬まれて起こる新興ウイルス感染症です。当初は西日本中心に発生していましたが、最近関東でも発生し、年間患者数は約60~100名で、令和3年7月まで計641名の方が発症しています。
SFTSの潜伏期間は6~14日で、主な症状は発熱と消化器症状の吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、血便などで、時に筋肉痛、リンパ節の腫れ、出血症状が現れ、血小板の減少や肝障害や腎障害が認められます。治療は対症療法しかなく、患者さんの6~30%が亡くなる怖い病気で、高齢者ほど致死率が高くなります。
マダニ媒介感染症にならないためには、咬まれない対策が重要です。マダニは春から秋にかけて活発に活動します。草むらや薮に立ち入る際には咬まれないように、肌の露出を最小限にする事が大切です。虫除け剤のなかには、マダニに効果があるものがあり、使用することをお勧めします。そして山野の活動後には入浴し、マダニに咬まれていないかを確認し、吸血中のマダニに気がついたら、自分で無理やり取らないで、皮膚科、医療機関を受診し処置を受けてください。
そして咬まれた後は、数週間は体調変化に十分注意して、発熱などの症状があれば、早期に医療機関を受診し、マダニに咬まれたことを伝えて、治療を受けてください。