人間が生きていくためには、体の各部分に十分な酸素と栄養がいきわたることが必要です。酸素と栄養を運ぶのが血液で、その血液を循環させるポンプの働きをするのが心臓です。
このポンプが故障すると、一つの電車の故障が他の駅に渋滞を広げていくのと同様に、次々と体に影響がでてきます。たとえば心臓から血液を送り出す能力が低下すると、疲れやすい、動悸(どうき)がするなどの症状が現れ、血液の渋滞が肺におこることによる息苦しさ、顔・手足におこることによるむくみ、肝臓(かんぞう)におこることによるお腹(なか)のはりや鈍痛(どんつう)が現れてきます。
このように心臓の働きが低下した結果、おきた体の状態を心不全といいます。もちろん心臓の働きのうち、どの働きがどの程度低下しているのか、その低下が急におこってきたのか(急性心不全)、徐々におこってきたのか(慢性心不全)によって、心不全の種類や程度はさまざまです。それは、心不全をきたす原因が一つではないからで、心筋(しんきん)梗塞(こうそく)や心臓(しんぞう)弁膜症(べんまくしょう)などあらゆる心臓病はもちろんのこと、高血圧で長年心臓に負担がかかっている場合などでも、しだいにその働きが不十分となり心不全の原因となります。
それでは心不全の治療はどうするかとなりますと、治療の原則はもともとの原因をはっきりさせ、その病気を治療することとなります。その上で、体内の余分な水分を取り除く利尿剤(りにょうざい)、心臓にかかる負担を軽くする血管(けっかん)拡張剤(かくちょうざい)や心臓に障害を与えやすい神経やホルモンの作用を抑制するベータ遮断剤(しゃだんざい)などの薬が使われます。
日常生活の注意点も含め、主治医とご相談ください。