ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の粘膜に存在する細菌で、元々は胃潰瘍(いかいよう)の原因として注目されました。その後、ピロリ菌が原因の胃炎が、胃がんの発生母地となることが明らかとなり、ピロリ菌はWHO(世界保健機構)から〝確実な発がん因子〟と認定されました。ピロリ菌を治療することで胃がんの発生が抑えられるのではないかと期待されています。
ピロリ菌に感染している人の数は国内で3500万人と推計されていますが、感染率は年齢によって異なり、60歳以上では70%前後と高い割合が報告されている一方で、10代以下では10%以下と低率です。幼児期に口から菌が入って感染すると考えられていますが、実際の経路は明らかになっていません。大人になってから新たに感染する心配は少ないようです。
ピロリ菌に感染しているかどうかを知るには、内視鏡(ないしきょう)を用いた検査、血液や便、呼気を調べる方法があり、それぞれの方法に長所と短所があります。
ピロリ菌を退治するためには3種類の薬を1週間服用する除菌治療が行われます。1回目の治療で除菌が成功する割合は8割程度ですが、不成功でも別の薬の組み合わせで2回目の治療をすると9割以上の方で除菌できます。
ピロリ菌が原因の胃炎があっても、ほとんどの人は無症状です。以前に胃・十二指腸潰瘍や胃炎と診断されたことのある人は、ピロリ菌の検査を受けることをお勧めします。ただし健康保険を使ってピロリ菌の検査、治療を受けるためにはいくつかの条件を満たす必要がありますので、詳しくはかかりつけ医にご相談ください。