デング熱

 日本では約70年ぶりに、昨年8月東京で海外渡航歴のない〝デング熱〟患者が報告されたことは、まだ記憶に新しいかと思います。

 デング熱は、熱帯〜亜熱帯地域に生息する〝ヒトスジシマカ〟や〝ネッタイシマカ〟という蚊(か)に刺されることで発病します。このヒトスジシマカは、日本国内にも青森県より以南に広く生息しています。しかし、ヒトスジシマカには元々デングウイルスはいません。デング熱に罹(かか)ったヒトを吸血して体内でウイルスが増殖し、このウイルスを持ったヒトスジシマカが、再度ヒトを刺すことで初めて発病します。また、あくまで蚊を介してのみヒト(発病者)→蚊→ヒトへと感染し、蚊を介さずに直接ヒト(発病者)→ヒトへ感染することはありません。

 デング熱の主な症状は、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛等といった感冒様症状です。しかし、38℃以上の発熱が1週間前後も続くこともあります。また、発病して2~3日経つと50~80%の患者に発疹(ほっしん)が出ます。まれに重症化し、鼻血、血便・下血、皮下出血、ショック症状(極端な血圧低下)等を起こすこともあります(デング出血熱、デングショック症候群)。

 デング熱は、ウイルスが病因なので有効な治療薬はありませんが、重症化しなければ、症状に応じた治療によりほとんど治るので予後は良好です。

 これからの蚊が活発に活動しだす季節は、まず蚊に刺されないようにすることが先決ですが、何よりも〝蚊の赤ちゃん=ボウフラ〟の住み家となるような水溜(た)まりを作らないことも必要となってきます。