異型狭心症(いけいきょうしんしょう)

 一般的に見られる労作性(ろうさせい)狭心症では、からだを動かすときに圧迫感や締め付けられるような感じの胸痛が起こり数分続きます。これは心臓を栄養する冠状(かんじょう)動脈に粥状(じゅくじょう)硬化症とよばれる動脈硬化が起こり、進行して内腔(ないくう)が狭くなって血流が悪くなり、運動時に心臓の筋肉が一時的に酸素不足になるからです。

 安静時に起こる狭心症もあり、その中で多いのが異型狭心症です。異型狭心症は日本人によく見られ、血管攣縮(れんしゅく)性狭心症とも呼ばれ、冠状動脈に明らかな動脈硬化は無いのに血管が痙攣(けいれん)して内腔が極端に狭くなるために胸痛発作が起こる疾患です。

 深夜、早朝の就寝中や安静時に胸痛発作が起こりやすいのが特徴ですが、早朝の運動時にも起こり、喫煙、過呼吸、ストレス、不眠やアルコール過飲が発作の引き金になります。胸痛に冷汗や嘔吐、失神を伴う時があり、重症の不整脈や心筋梗塞を起こして突然死する方もおられます。

 診断は発作時の心電図を記録するのが困難ですので、心臓カテーテル検査で冠状動脈造影を行い、動脈硬化が見られなければ薬剤を投与する誘発テストを行って血管攣縮の有無を確認します。

 治療は禁煙とカルシウム拮抗薬(きっこうやく)の服用が有効とされています。

  尚、動脈硬化は無くても血管内側の傷みが見られ、やがて内腔の狭窄(きょうさく)が進展する可能性があり、経過観察が必要です。また安静時の胸痛には、急性冠症候群と呼ばれる重症の不安定狭心症や心筋梗塞の可能性もありますので、早期発見、早期治療が大切です。