もの忘れの病気で典型的なものはアルツハイマー型認知症です。もの忘れが年単位でゆっくり進み発病時期がはっきりしないのが特徴です。ご家族にもの忘れはいつからですかと尋ねると「1年位前かしら」「いえ2年位前かも」と言われます。それにひきかえ「うちのおじいちゃん、ここ2日間で急にボケたみたいなんです」という場合、これは認知症ではありません。せん妄(せんもう)という身体疾患(意識障害)です。
せん妄には興奮するタイプのせん妄と、静かなタイプのせん妄の二つがあります。前者の典型的なケースは次のようです。
『80歳男性が肺炎で入院。昼はなんともなかったのに夜になると大声を出す。点滴を外そうとしたり病室から廊下に出ようとする。病棟から家族に夜間付き添いを依頼される。』
どこかで聞いたことがありますね。それに対して静かなタイプのせん妄は次のようなケースです。
『80歳女性でもともと寝たり 起きたりの生活。一昨日から声をかけても的はずれの返事をするし、足元が弱って尿を漏らしてしまうし、急にボケたみたいなんです。』
これらはせん妄と言い、認知症ではなく意識障害の一種です。誘因として肺炎などの感染症、外傷、睡眠剤など薬の影響、アルコール、ビタミン欠乏症などがあげられます。夜に比べて昼は症状が軽く、見舞客には「割としっかりしてるじゃない」と言われます。急なもの忘れは、早急に医療機関にご相談ください。