高齢者のうつ病

 うつ病と聞けば世間一般的には、気持ちが落ち込むことで社会や仕事に対して適応困難になる30~40歳代の働き盛りの人特有の病気と思われているかもしれませんが、実は高齢者においても比較的多くみられます。

 仕事のストレスが原因となりやすい若者のうつ病と比べ、高齢者の場合には仕事を辞めたり、長年連れ添った家族との死別等の喪失体験が原因となります。また自身が重い病気にかかること、また後遺症で苦しむ体験等を通じても、残された人生への楽しみや、やりがいが見いだせずに、気分が落ち込み発症します。

 高齢者のうつ病に現れやすい症状としては、注意力が散漫になったり、これまで続けてきた趣味に興味をなくしたりなどのありふれた変化であることが多く、なかなか周囲の人に気づいてもらえません。また、記憶や判断力が低下すると認知症の症状と間違われて、しばらくは様子をみられてしまい、進行して相当に時間が経ってから遅れて診察に訪れる場合も見受けられます。

 うつ病は早く発見して治療すれば治る病気です。ただうつ病にかかった高齢者が、自ら気にして受診に来られることは非常に困難であり、家族の気づきが必要です。ぜひ身内の方の気になる変化に注意してあげてください。