甲状腺は、のどぼとけのすぐ下にある小さな臓器で、正面から見ると蝶が羽を広げたような形をしています。健康な人の甲状腺は平坦でやわらかいので、見ても触ってもその存在はほとんどわかりませんが、炎症を起こしたり腫瘍ができたりすると腫れているのがわかるようになる場合もあります。
甲状腺は甲状腺ホルモンをつくる大切な臓器です。食べ物に含まれるヨウ素が甲状腺に取り込まれて、それを材料に甲状腺ホルモンが作られます。甲状腺ホルモンは身体の成長や脳の発育に必須であるばかりでなく、全身の諸臓器に作用して様々な代謝(たいしゃ)にかかわったり、心臓の動きを活発にしたりする働きがあります。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、脈が速くなって心臓がドキドキしたり、暑 くもないのに汗がだらだら出たり、しっかり食べているのに体重が減ったりすることがあります。
逆に甲状腺ホルモンが不足すると、脈拍がゆっくりになりやすく、汗が出なくて皮膚が乾燥するようになります。体重増加や便秘もよくみられます。また、血液中のコレステロール濃度が高くなることが多く、このことがきっかけとなってこの病気が見つかることもあります。元気がなくて疲れやすく、思考力が低下する場合もあるので、うつ病や更年期障害、認知症などと間違われることもあります。
体調がすぐれない時は、甲状腺の病気も疑ってみてください。甲状腺ホルモンは血液検査で測定が可能ですので、かかりつけ医にご相談ください。