認知症が急に悪くなったら

認知症の代表的な疾患はアルツハイマー病です。もの忘れで始まってゆっくりと進行し、これまで普通にこなしていたことが、徐々にできなくなります。しかし、かなり進行するまで手足の不自由や歩きにくさ、飲み込みにくさ(嚥下障害)といった身体的な症状は見られません。

アルツハイマー病の様々な症状は、大脳の神経細胞が減ってくることで起こります。しかし実際には、そのような脳内の変化だけでなく、いろいろな要因が症状に影響を及ぼします。たとえば、心臓病が悪くなったり肺炎を合併すると認知症も悪くなることがあります。発熱、脱水、あるいはカゼ薬の服用、さらには精神的ストレスや急に生活環境が変わるといったことでも、認知症が進行したようにみえることがあるのです。

なかでも気をつけないといけないのは慢性硬膜下血腫です。これはアルツハイマー病などの認知症の人だけに限ったことではありませんが、高齢者は足元が不安定なので、転倒して頭を打つ危険があります。認知症があると、頭を打ったことも忘れてしまうので家族が気づかない場合もあるのです。

この頭部外傷が原因となって、頭蓋骨と大脳とのすき間に少しずつ出血してくるのが慢性硬膜下血腫です。いままではなかった片麻痺や歩行障害、尿失禁、それになんとなく元気がなくボーとしている、といった症状がみられたら、頭のCT検査を受ける必要があります。

いずれにしても、認知症の症状が急に悪くなったら、その病気そのものの進行と考えるより、ほかの病気の合併や、症状を悪くしている原因がないかを調べることが必要です。