奈良県医師会 中村義行
じんましんは突然、皮膚の一部がくっきりと赤く腫れて盛り上がる病気です。多くの場合、かゆみを伴います。また、一般に、数時間から1日以内に跡形もなく消えてしまうことが多いのが特徴です。
私たちの体には、体内に侵入した異物から体を守る働き(免疫)が備わっています。じんましんは、この免疫の働きに異常が生じることで起こります。異物など何らかの刺激によって、皮膚にある肥満細胞(免疫細胞の一種)からヒスタミンが放出され、血管が拡張したり血液中の血漿成分が漏れ出したりして、皮膚が赤く腫れます。さらに、ヒスタミンが神経を刺激することでかゆみが起こります。
じんましんは、原因がはっきりわかっているタイプと、わからないタイプに分けられます。原因がはっきりわかっているタイプを「刺激誘発型じんましん」といい、全体のおよそ3割です。様々な刺激が原因となり、衣服と皮膚のこすれ、日光、寒冷、温熱、圧迫などの物理的な刺激によって起こります。他にも特定の食べ物などに対するアレルギーで起こる場合もあります。また、入浴や運動などで汗をかくと現れるものを「コリン性じんましん」といい、小児から若い成人に多く見られます。コリン性じんましんはひとつひとつの膨疹(ぼうしん)が1~4mm程度と小さく、密集して現れるのが特徴です。
一方、原因がはっきりわからないタイプを「特発性じんましん」といい、全体の7割を占めます。これは細菌やウイルスなどの感染・疲労・食べ物・ストレスなど、さまざまな原因が絡み合って起こるのではないかと考えられています。
治療としては、原因がわかる場合はそれを取り除いて症状が起こらないようにします。例えば、食べ物によるアレルギーがある場合には原因となる食べ物を避ける対処をします。原因を避けるのが難しい場合や原因がわからない場合は、まずアレルギーを抑える抗ヒスタミン薬を使います。最近の抗ヒスタミン薬は、眠気などの副作用が比較的少なくなっているので、長期間服用しても問題はないと考えられています。また、抗ヒスタミン薬を継続して使用することで、じんましんが起こりにくくなると考えられています。
抗ヒスタミン薬を服用しても効果が現れなかった場合、近年注目されているのがオマリズマブという薬です。これは肥満細胞からヒスタミンが放出されるのを抑えることによって効果を発揮する薬です。オマリズマブは注射薬で4週毎に皮下注射し、健康保険の適応があります。
じんましんは症状がずっと出ているわけではないので、症状が治まってしまうと医療機関を受診するのをためらいがちです。しかし、頻繁に起こるじんましんを長期間放置すると重症化したり、治りにくくなったりするため、早めに医療機関を受診することをお勧めします。