糖尿病患者さんにビッグニュース!

奈良県医師会 赤井靖宏

糖尿病は今や日本人の10人に一人が患っているといわれる病気です。糖尿病は血糖値が異常に高くなる病気です。血糖値が長期間にわたって高くなると、全身の血管が傷つきます。その結果、腎臓が悪くなったり、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなったりします。そんなことにならないように、糖尿病を患っておられるみなさんは食事療法や運動療法など自分でできる努力をたくさんされていると思います。それでも血糖値が高い場合はお薬をのむことになりますが、糖尿病のお薬をのむというと躊躇(ちゅうちょ)される方が多いと思います。しかし、そんな時代は終わりました!糖尿病のお薬はこの10年で大きく進歩しましたが、なかでもSGLT-2阻害薬(エスジーエルティーツー阻害薬)というお薬が注目されています。SGLT-2阻害薬は糖尿病の薬の中では新人ですが、あっという間に糖尿病治療の中心におどり出てきました。なぜSGLT-2阻害薬が注目されるのでしょうか。
SGLT-2阻害薬は、尿の中にブドウ糖をたくさん捨てることによって血糖値を下げる作用を発揮します。デビュー当時は血糖値を下げること以外にはさほど期待されていなかったお薬でしたが、なんと期待をはるかに上回る効果を持つことがわかってきました。その効果の1番目は、「やせる」ことです。SGLT-2阻害薬は、服用してしばらくすると多くの患者さんで体重が減ってきます。体重が減ると体から分泌されるインスリンがよく効くようになり、血糖値は改善するので、単に糖を尿中に捨てる以上の治療効果がみられます。また、体重が減るとお薬を嫌がっていた患者さんにも喜んでお薬をのんでもらえます。期待以上の効果の2番目は、「心臓病に効く」ことです。これは全く予想もされていなかった効果なのですが、このお薬は心不全を予防したり、心不全による入院を減らしたりすることが明らかとなってきました。さらに、心房細動という高齢者に多い不整脈(脈の乱れ)を予防することもわかってきました。 SGLT-2阻害薬の予想しなかった効果の3番目は、「腎臓を守る」ことです。糖尿病を長く患っていると、尿にたんぱくがおりたり、腎臓の働きが悪くなったりする場合があります。このような場合にしっかり治療を受けないと、透析や腎移植が必要になります。SGLT-2阻害薬は、血糖値を下げる以外に、腎臓を守って透析などを予防する効果がありそうなのです。尿にたんぱくがおり始めた場合にこのお薬をのむと、尿たんぱくが治ってしまう場合もあります。このように、SGLT-2阻害薬は私たちが想像もしていなかったすばらしい治療効果を糖尿病患者さんにもたらしています。もちろんこのお薬にも副作用がないわけではありませんし、だれにでも効果があるわけではないので、医師に相談して指示を守ってのむ必要があります。
このような素晴らしいお薬が開発されていますので、糖尿病患者の皆さんは、どうかお薬をいやがらず、医師から勧められた場合には早めにお薬をのみ始めていただきたいと思います。