奈良県医師会 笠原仁
新型コロナウイルス感染症でみなさんの関心事はいろいろあると思うのですが、今回は検査についてお話ししようと思います。
令和2年7月現在、日本ではPCR法、抗原検査、抗体検査の3つが厚労省によって認められている検査となります。この中で検査時点での感染を証明できるのが、PCR法と抗原検査となります。抗体検査は感染したことがあるかどうかを調べるものであって、検査時点の感染の有無を調べるものではありません。以下の検査とは、PCR検査を指すこととします。
次にすべての検査において偽陽性、偽陰性があります。偽陽性とは本当はかかっていないのに陽性と判定されることで、偽陰性とは本当はかかっているのに陰性と判定されることです。報告によって数字のばらつきはありますが、検査で偽陽性は1%未満、偽陰性はインフルエンザの検査と同じで検査する日によって20~100%という感じです(2020年3月米国内科学会雑誌)。すなわち感染していない人100人に検査をしたら1人は陽性になってしまい、また感染している人100人に検査をしたら、検査時期にはよりますが20人から最悪100人全員が陰性になってしまう、ということになります。調べた限りでは、平均すれば30%くらいの偽陰性があるような報告が多いようで、政府の会議でもこのあたりの数字を前提に議論されているようです。
検査を複数回できる環境が整いつつある最近では『1回目の検査では陽性が出なかったが、症状が続くので再び検査をしたら陽性であった』という記事を目にすることが増えてきましたが、これはまさに1回目は偽陰性だったということになります。
まとめてみますと、現在の新型コロナウイルス感染症のPCR検査は、陽性であればほぼほぼ感染していると判断して間違いありませんが、陰性であった場合は感染していないという判断をするのには無理がある(100人の感染者のうち、平均で30人は検査で陰性になってしまう)ということになります。
今後、検査を受ける方も増えてくるかと思いますが「検査を受けて陰性だったら安心ですので検査を増やしてほしい」という街角インタビューがテレビでよく流れていることが心配です。検査を受けられるときには、検査の陽性、陰性の意義をしっかり理解して受けていただきたいと思っています。
またインフルエンザの検査も同じなのですが、会社や学校などで、検査結果の陰性をもって感染していない、という扱いにすることには慎重になっていただきたいと思います。