インフルエンザワクチンの流通について

奈良県医師会 笠原仁

 

今回は、インフルエンザワクチンが作られる過程についてお話ししようと思います。

まず、そのシーズンにどんなインフルエンザが流行するかを予想するところから始まります。これは世界保健機構から毎年2月下旬ころに発表される推奨株と呼ばれるものの中から、日本での有効性、製造の難易度などを勘案して選ばれていきます(現在、日本ではその中から4種類選ばれています)。

そして決定され次第、国内各メーカーで製造がはじまります。ワクチンを作るためには、まず有精卵を使います。ここが大変で、卵1~2個から大人1人分のワクチン原液しかとれません。しかも、その卵でワクチンとして使えるようになるのに約半年もかかるのです。ここで、シーズンに入ってから足らないと言って、増産ができない理由がお分かりいただけると思います。不足する理由に他には検定落ちといって、国家検定の合格がもらえず、多数のワクチンが破棄されることもあります。だからといって、その分を増産することができないのも生産の流れを知れば当然のことですし、検定落ちのワクチンなんて、だれも使いたくないですよね。

このように数々の難関をくぐりぬけて出荷されるインフルエンザワクチンですが、出荷されてからも、通常の薬とは違う流通の問題があります。それは<昨年度、購入した量しか売ってくれない>ということです。といいますのも、当たり前といえば当たり前なのでしょうが、製造会社は昨年売れた量しか作りません(今年のように国から増産してくれ、という要請があれば増産することはありますが)。そうなると、製造会社と医療機関との間にある問屋さんも、去年と同じ量しかメーカーから売ってもらえないため、必然的に医療機関に対して去年の量しか売れません、ということになります。

そしてその出荷のタイミングにも問題があります。10月になったら一斉に出荷、納品されるわけではありません。期間が長いところですと、10月から12月下旬にかけて、何回かに分けて出荷する製造会社もあります。

このような理由から、せっかく医療機関に予約されても、今はないといわれた、入ったら電話するからと言われた、毎年接種している人が優先と言われた、というようなことが起こりうるわけです。予約制にされているところ、早い者勝ちにされているところなど医療機関によって様々ある理由は、以上のようなことであるとご理解いただければ幸いです。

 

出典:厚生労働省