奈良県医師会 山下圭造
我々の心臓は24時間休むことなく動き続け1日に約10万回も拍動しています。その1回1回の拍動は心臓の上部、右心房にある洞結節(どうけっせつ)という特殊な心筋が発する電気刺激が起源になっています。その刺激は刺激伝導系というルートを通って、約0.3秒という速さで全体に広がり、心臓を拍動させて全身に血液を送っています。この電気の流れを体外から測定記録したものが心電図です。
正常の場合、安静時に洞結節から毎分50~100回の刺激が規則正しく発生・伝導し、正常洞調律(どうちょうりつ)と呼ばれます。そのリズムには自律神経や一部のホルモンが影響を及ぼしており、緊張やストレス、運動時に脈拍が速くなるのはこのためであり、生理的な変化と言えるでしょう。
刺激の発生や伝導に異常が生じて、正常洞調律から逸脱した状態が不整脈です。不整脈の種類は細かく分類すると何十種類にも及びますが、比較的発生頻度が高いのは、
◎刺激の発生に異常があるタイプ
期外収縮、心房細動、洞不全症候群、発作性頻拍(ひんぱく)など
◎刺激の伝導に異常があるタイプ
房室ブロック、脚ブロック、WPW症候群など
が挙げられます。
不整脈の種類や程度により、自覚症状の現れ方はまちまちで、動悸や息切れ、一瞬の胸の痛みや不快感、体のだるさやふらつき、重いものでは突然の失神や死に至るものまで様々です。またその一方で、全く症状がなく健康診断で指摘を受けるものも少なくありません。症状がないから軽症であるとは言えないのが厄介なところです。
特に心臓に基礎疾患(心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、先天性心疾患など)を持っている方や高血圧、肺疾患、腎臓病、甲状腺の病気を指摘されている方、そして血縁に突然死を起こした人がいる方は注意が必要です。不整脈が基礎疾患の状態悪化のサインであったり、心不全や脳梗塞などの重大な合併症を招く原因になることがあります。
皆さんは、手首で自身の脈を触れたことがあるでしょうか。10秒間で10~15回規則正しく触れていますか。全くバラバラに触れたり、何回かに一回飛んでいませんか。ほとんどの人は、自分の心臓の拍動を気に留めずに生活しています。それだけに一旦、脈の異常を自覚すると強い不安感を持ち、それがストレスになってさらに症状を悪化させることが多いのです。
健康診断で不整脈を指摘されたり、ご自身で脈の異常を感じた場合は、不安な気持ちを抱えながら様子を見るより、早めに受診されるのが良いでしょう。症状に関する問診と心電図をチェックすれば、どの程度の異常か、さらに検査が必要かなど判断できますので、まずは医師に相談されることをお勧めします。