憩室といわれる用語を知っていますか?

奈良県医師会 久保良一

 憩室(けいしつ)という聞き慣れない医学用語をご存じでしょうか?

憩室とは、食道から大腸までの消化管の壁の一部が外側に押し出されて、風船・ポッケト状に膨らみ突出している事をいいます。憩室は大腸にできる事が一番多く、大腸検査の大腸内視鏡検査や注腸バリウム検査で指摘された方も多いと思います。憩室は時には大腸憩室症と呼ばれている病気の原因となる事があります。そこで今回は大腸憩室症についても述べていきます。

大腸憩室はほとんど後天性で起こりますが、高齢化や食生活の欧米化により、増加傾向であると言われています。

食物繊維の摂取不足が起こると便秘が起こりやすくなります。大腸に便が溜まると大腸の内圧が上昇し、そして大腸壁の筋層が部分的に弱くなると内圧で外に押し出されて膨らみ、憩室ができやすくなります。

頻度は40歳以下では少ないですが加齢と共に増加し、70歳以上では約50%の方が大腸憩室を持っていると言われています。憩室は大腸全ての部位に出来ますが、日本人は右側大腸に起こりやすく、近年では高齢化に伴い左側大腸やS字結腸にも多くなっています。憩室の大きさはほとんど5~10mm大で単発から多発し、ブドウの房のように多くできる事もあります。

憩室は多くは無症状で経過しますが、憩室症になると憩室出血や憩室炎が起こります。憩室出血が出現すると、便に血が混じり高齢者の血便の原因の一つになります。憩室炎は、憩室に細菌が感染して起こります。症状は発熱や腹痛(主に下腹部)、吐き気、便秘下痢などが現れます。

また右下腹部が痛む場合には、虫垂炎との鑑別が必要で、進行して重症になると穿孔(せんこう)や腹膜炎症状が起こります。

憩室炎の診断は、血液検査で炎症反応を確認し、腹部エコーやCTで大腸壁やその周辺の炎症性変化を見て判断します。また憩室炎が治った後には、大腸内視鏡を行う必要があります。

治療は安静や食事制限を行い、炎症の程度により抗生物質を投与します。軽症例は外来通院の保存的治療でほとんど改善しますが、症状や炎症の程度に応じて入院治療を行います。また憩室に穴があいたり腹膜炎などを伴う場合には、外科的手術が必要となります。

予防は加齢の要因もありますが、大腸に憩室ができない事が肝要です。食事は動物性蛋白質や高脂肪食の取り過ぎを避け、食物繊維を多く含む食事に努め、できるだけ便秘にならないように心掛けてください。

大腸検査で憩室があると言われた方は、便通に気をつけ憩室炎の発症リスクでもある喫煙や肥満に注意してください。