不活化ポリオワクチンの近況について

奈良県医師会 奥村 眞由美

ポリオ(急性灰白髄炎:きゅうせいかいはくずいえん)は、ポリオウイルスに感染しておこる病気です。1~2才の小児に多く見られ、感染しても90~95%は無症状で、4~8%にカゼのような症状(下痢、発熱、咳等)、発症者の0・1%くらいに麻痺(まひ)症状が現れます。麻痺は下肢(かし)におきることが多く、その50%くらいに筋力低下、運動障害などの後遺症(こういしょう)を残します。

わが国ではこれまで、経口の生ポリオワクチンによる定期予防接種(生後3~90ヵ月の間に41日以上あけて2回経口接種)が行われてきました。そのため、国内では1980年を最後にポリオの自然感染による患者はありません。

しかし、ワクチン接種を受けた後、100万人に1・4人程度の割合で手足に麻痺が現れることがあります。起こりやすい原因として、①初回の投与であること、②免疫不全のある小児の場合、③内服1ヵ月以内に筋注や手術等の損傷を加えた場合、④肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)を有する小児等があげられています。内服した子供の家族に症状がおよぶこともあります。

このため、近年、重い健康被害のない不活化ポリオワクチンが注目されています。

海外では、以前より強毒性野生株を不活化したポリオワクチンが用いられていますが、日本では承認されていません。このため、現在、個人輸入により入手して、1回5~6千円ぐらいで接種する医療機関もあります。

さらに、日本国内においても、弱毒性野生株からつくる新たな不活化ワクチンの開発が始まっており、不活化ポリオワクチン+(プラス)三種混合ワクチンとしての承認申請(しょうにんしんせい)が2011年12月に出されたようです。2012年末には混合ワクチンとして接種が可能になるかもしれません。

導入への課題としては、単独での投与は今のところできないこと、サンプル数がきわめて少なく、副作用や効力についてはわからないところもある等が指摘されています。