むくみ

奈良県医師会 水野崇志

むくみは、浮腫(ふしゅ)とも言って皮膚の下に水分が余分にたまっている状態のことです。一般的には足のすねを指で押して戻る具合で、むくみの有無を判定します。むくみがあると慌てる方もおられますが、病気以外の原因も多く、特に一時的、短期的なむくみのほとんどは心配する必要はありません。また、水分を摂り過ぎたからといってむくむこともあまりありません。

むくみを詳しく説明するには身体の水分を理解する必要があります。身体の水分は血液が主だと思われがちですが、実際血液は血管という管の中だけに存在する水分であり、かなりの割合が筋肉や脂肪等の細胞の中にあります。具体的には、人間の身体は約60%が水分ですが、2/3が細胞の中に、1/3が血管等の細胞以外に存在します。細胞以外の水分には管の中(血管やリンパ管)ではない、細胞の隙間にたまる液があり、それを細胞間質液と言います。実はこれがむくみに関係しています。身体の水分の割合としてはそれほど多くはなく、水分制限があまり関係ないのはこのためです。血管やリンパ管には細かい穴が開いており、そこからしみ出した水分が細胞間質液となり、血管の内外を行き来しています。そうして血管の中の酸素や栄養を細胞に届けたり、老廃物を血管に運んだりする働きをしています。むくみとは、その細胞の隙間の水、細胞間質液が余計にたまっている状態です。これらは血管から細胞の隙間へ流れ出る水分が多くなる、血管やリンパ管へ吸収される水分が減ってしまう、などの理由で起こります。起こりやすい状況としては血液やリンパ液の流れが悪いことが多いです。

むくみは身体のどの部位でも起こりますが、特に足は心臓から遠く、重力の関係もあって血流が悪くなりやすいためむくみやすいのです。一日中立ったり、座っていた後に足がひどくむくんでいたり、横になって寝た後に足のむくみが引いていたりするのは誰もが経験したことがあると思います。足の血液は立位では重力に逆らって運ぶ必要があり、そこで大きな役割をしているのがふくらはぎの筋肉です。ふくらはぎの筋肉をあまり動かさなかったり、筋肉が衰えてくると足がむくみやすくなります。女性の方がむくみやすいのは、ホルモンの関係もありますが一般的に男性より筋肉量が少ないためです。高齢になるほどむくみやすいのも同様です。最近足がむくみやすくなったと感じるときは、まず足を使った運動をしているか、普段から足を使うようにしているかを考えてみてください。特に最近は新型コロナの影響で今までより運動する機会が減っている方も多いと思います。

むくみは、それ以外にも塩分摂取が多い場合や、栄養状態の悪いとき、飲酒によっても生じることがあります。また、ストレスや睡眠不足も原因となることがあります。このように普段の生活の影響で生じやすいので、むくみが気になる方は、まずライフスタイルを見直してみてはいかがでしょうか。

ただし、気をつけたほうが良い症状がいくつかあります。急に誰が見てもすぐ分かる程ひどくむくむ、朝夕、姿勢等関係なくむくんでいる、改善せずにどんどんひどくなる、片足だけむくむ、息切れや発熱を伴う等です。むくみは心臓や血管、腎臓、肝臓等の病気から発症することもあるので、これらの症状があれば一度診察を受けるようにしてください。