奈良県医師会 丸山祥代
今年も大雨によって、熱海をはじめ日本各地で大きな被害がありました。罹災された方々には心からお見舞い申し上げ、一刻も早く日常生活に戻られるようにお祈り申し上げます。
日本は地震大国であり、台風などの豪雨・暴風など自然災害が多いため、いつ自分たちが避難する立場になるかわかりません。避難生活では自宅であれ避難所であれ、日常とは大きく違う生活を強いられます。乳児のいる家庭においてはさらに気を張りつめた生活になるでしょう。災害時には弱いものへの配慮は後回しになりがちです。しかし、赤ちゃんが落ち着いて過ごせると、お母さんや家族はもちろん、周囲のひとも過ごしやすくなるはず。最低限必要なことを知り、みんなで見守っていきましょう。
▷赤ちゃんは、母乳や乳児用ミルクがなければ生きていけません。
・授乳方法は原則として普段どおりりでかまいません。
・授乳方法はお母さん(保育者)と赤ちゃんが決めること。周囲はそれを支持しましょう。
▷母乳をあげている場合
母乳には免疫物質が含まれており、あげ続けることで病気にかかりにくくなります。一時的に出にくくなることはあってもストレスだけでは母乳は止まりません。分泌量を減らさず、母乳トラブルを避けるためには以下のことが大切です。
①欲しがるときに欲しがるだけあげる
②スキンシップをたくさんとる
③できるだけリラックスして過ごす
また、母乳が十分飲めているのかどうかが心配になることもあると思います。そんなときはおしっことウンチの回数を数えてみてください。今までどおりであれば心配いりません。もし、おしっこが1日6回より少なくなるようなら遠慮せず相談してみてください。
▷乳児用ミルクをあげている場合
調乳の衛生面に注意しましょう。
①粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かして(沸とうさせて熱いうちに調乳)滅菌させる
②哺乳びんなどの洗浄・滅菌が難しいときは使い捨ての紙コップを使う
③粉ミルクも液体ミルクも2時間過ぎたら捨てる
④調乳前には手指消毒をしっかりする
《コップを使って飲ませる方法のコツ》
コップに下唇が軽く触れ、コップのふちが上唇の端に少し触れる程度。
ミルクを流し込むのではなく、赤ちゃんがすするのを待つ感じ。
普段から試しておくと、いざというときに慌てなくてすみますね。
▷赤ちゃんを落ち着かせ、お母さんも肩の力を抜くために必要なこと
・赤ちゃんと十分にスキンシップをとる
・深呼吸してみる、肩や背中のマッサージ
・乳房を何度でも赤ちゃんにふくませてみる
・お母さんどうしで情報交換
・気持ちを聴いてもらう
▷周囲のひとや避難所運営される方へ
・乳児用ミルクを必要とする赤ちゃんの数と状況を把握する
・調乳に必要な衛生環境を可能な範囲で整える、安全な調乳方法、授乳方法を伝える
・プライバシーを確保した授乳スペースをつくる
・赤ちゃんやお母さんたちにいたわりのまなざしを向ける
9月1日は防災の日。これを機会に家庭や自治会、地域で自分たちの災害への備えを見直してみてください。
《参考資料》
母と子の育児支援ネットワーク ホームページ
「災害時の乳児栄養の支援情報」
上記の内容が詳しく載っています。コップ飲みやお母さんへのリーフレット、お母さんや支援者向けのオンライン相談窓口や多言語の説明もありますので、ご利用ください。