変形性膝関節症治療の治療指針

奈良県医師会 中垣公男

変形性膝関節症は、筋力低下、加齢、肥満などにより膝の軟骨やクッションの働きをする半月板が破れ、痛みを伴う病気です。国際変形性関節症学会の治療ガイドラインは「推奨度」で分類されています。Aは「行うように強く推奨する」 Bは「行うよう推奨する」 Cは「行うことを考慮してよい」 Dは「推奨しない」 Iは 「委員会の設定した基準を満たす証拠がないか結論が定まっていない」と定められています。

 

≪推奨度:A≫

非薬物療法と薬物療法の併用が必要です。

【非薬物療法】

1.定期的な有酸素運動、筋力強化訓練および関節を動きやすくする訓練をします。椅子に座り膝を伸ばして10秒保持する大腿四頭筋訓練をします。

2.体重をより減らします。

3.痛みのない側の手で杖やステッキを使います。両側が痛い患者には、フレームまたは車輪付き歩行器を使います。

【薬物療法】

鎮痛剤を最小有効用量で内服しますが、長期投与はできるだけ避けます。

【外科的療法】

非薬物療法と薬物療法の併用によって十分な痛みが取れない場合は、人工関節の手術を考えます。

 

≪推奨度:B≫

1.ヒアルロン酸注射は有用な場合があります。ヒアルロン酸関節内注射については医療保険での適応の違いがあります。米国では 鎮痛剤が無効の進行症例に対してのみ適応が認められています。このような進行例でのヒアルロン酸関節内注射の有効性は低いとされています。日本では早期から使用されていて、欧米の事情とは違います。 逆に早期例での有用性は高い可能性があります。日本の医療保険での適応症例には早期例も含まれており、 治療効果は高いと判断されます。したがって日本の医療保険に認められた使用での有用性はより高いと判断されます。

2.足の裏に着ける足底板(インソール)により痛みが和らぎ、歩きやすくなります。膝関節内側に痛みのある方は、外側が高くなっている足底板が 症状緩和に有効です。

3.軽度~中等度の患者において、膝関節装具は疼痛の緩和や安定性を改善し、転倒のリスクを低下させます。

4.鎮痛剤の湿布や塗り薬は、経口鎮痛薬への追加または代替薬として有効です。

 

≪推奨度:C≫

温熱療法と経皮的電気神経刺激療法とステロイド注射です。

副腎皮質コルチコステロイド関節内注射は経口鎮痛薬または抗炎症薬が十分に奏効しない中等度~重度の疼痛がある場合、および関節内に水が溜まっている患者において考慮します。

 

≪推奨度:D ≫

軟骨保護作用を目的としたグルコサミンやコンドロイチン硫酸の使用は勧められません。

 

≪推奨度:I≫

グルコサミンやコンドロイチン硫酸の投与は症状を緩和させる場合があります。6ヵ月以内に効果がみられなければ投与を中止します。グルコサミン、コンドロイチン硫酸は疼痛緩和に対する明らかな証拠は認められていません。

 

膝の痛い方は自己判断でサプリメントなど飲まずに整形外科を受診されることをお勧めします。