尿が近い、もれる ~頻尿、尿失禁は原因によって治療法も変わる!~

奈良県医師会 前田純宏

☆尿が近い(頻尿)

頻尿は、過剰な飲水をせず「日中2時間以内に行く。夜の睡眠8時間以内に2回以上」が目安です。原因は主に以下の4つがあります。

①残尿感で行く(膀胱炎)②気になって繰り返し行く(心因性頻尿)③大量の残尿がある(前立腺肥大症など)④膀胱が小さい(過活動膀胱)

診療でこれらを見分けるポイントは「問診」と「検尿」です。

検尿で白血球(炎症所見)や細菌を認めれば、①「膀胱炎」と診断し抗生剤で治療

問診で「尿が我慢できず漏れそうになる(切迫感)」症状があれば④「過活動膀胱」治療薬で改善します。

50歳以上男性の場合は③前立腺肥大症で残尿が増える可能性があり、下腹部の超音波検査による診断が必要です。この場合は前立腺肥大症の治療(薬や手術)が優先されます。

これら①③④と診断されない場合は②心因性頻尿かも知れません。「尿が漏れそうな切迫感がなければ2時間くらいの間隔で我慢してください」という膀胱訓練を指導します。しかし初めから「心因性」として本人努力次第というのは患者様の心理的負担となる時もあり、過活動膀胱治療薬を併用しながら膀胱訓練していただく事もあります。

最も多い④過活動膀胱は、多種の薬があり治療効果が期待できます。加齢だけでなく、喫煙、肥満、糖尿病、高脂血症が引き起こす動脈硬化病変が過活動膀胱の原因となりますので、生活習慣病を予防し、若い軟らかい膀胱を保つ事が予防の秘訣です。

ちなみに「夜間頻尿は夜1回以上」との記載も多いですが、生活上困っていない状態であれば、「夜間頻尿」=病気とは心配せず、生活の質を損ねる場合は特に治療が必要とお考えください。

 

☆尿が漏れる

こちらも様々な状況と原因があります。

⑤排尿の「あと」に漏れる男性・・・排尿後に尿道に残った尿がトイレを出てから下着を汚す。尿をスッキリ出す前立腺肥大症治療薬が効く場合もありますが、排尿後十分に時間をかけて指先で尿道をしぼるのが薬より有効かも知れません。これは言葉の定義上は「尿失禁」ではなく「排尿後滴下」で、やむを得ない加齢現象の一つといえます。

⑥女性が「力が入ると」漏れる(腹圧性尿失禁)・・・加齢や産後で骨盤底(股間)の筋肉が弱ると、お腹に力が入った時(くしゃみ、笑い)に漏れます。腟と肛門を一緒に締めたり緩めたりして尿の出口の筋肉(骨盤底筋)を鍛える体操が薬以上に重要です。治療薬は少なく重症例には手術が施行されます。

⑦排尿直前に我慢できず漏れる(切迫性尿失禁)・・・上記④過活動膀胱の治療薬の効果が期待できます。

⑧「男性」が尿を自力で出せず「あふれて」漏れる・・・上記③前立腺肥大症が重症の状態で、診断を間違って⑦への投薬をすると悪化する危険があります。重症前立腺肥大症は手術が必要です。

 

☆このように頻尿や尿失禁には様々な原因があり、困っている時は泌尿器科など専門医受診をお勧め致します。