奈良県医師会 丸山 祥代
受験生の皆さん、いよいよ本番が近づいてきましたね。入試に限らず、大切な行事は誰しもベストコンディションで臨みたいものです。手洗いうがいはコロナのおかげで習慣になったし、インフルエンザワクチンやコロナワクチンも済ませた、あとは早寝早起きで朝型のリズムを作りながらラストスパート、といったところでしょうか。
ところで、その当日に月経が重なったらどうでしょう。「全然問題ないよ」と言える方はもちろんそのままでよいでしょう。しかし、「お腹が痛い」「頭が痛い」「眠気がつらい」「イライラして集中できない」、このような症状が出る方は、できれば月経じゃないほうが良いパフォーマンスが出せるかもしれません。
月経というのは2つのホルモンが関わっています。1つは卵胞ホルモンで、排卵までの間に子宮内膜を厚くさせます。排卵が起こるともう1つの黄体ホルモンも分泌されるようになり、子宮内膜は受精卵を受け入れる準備を整えます。しかし、受精卵が来ないと黄体ホルモンは約14日で分泌されなくなり、そのことがサインとなって子宮内膜がはがれ出血とともに体外へ排出されます。これが月経のしくみです。
このことを利用して月経時期をずらすことが可能になります。黄体ホルモンを飲むと月経直前状態になるので、飲んでいる間は出血せず飲み終わると出血が起こります。つまり、黄体ホルモンを飲み終わる日によって出血時期が決められます。
このときに使用するのは中等量ピルか低用量ピルです。予定のある日より月経を早めるか遅らせるかによって服薬方法や日数を決めます。副作用としては、頭痛、吐き気、乳房の張り、眠気、不正出血などがあります。中等量ピルのメリットは直前での調整に使用できることです。しかしホルモン量が多い分、副作用はやや多くなります。低用量ピルには、月経痛の軽減、月経量の減少に加えて排卵痛やにきびの改善などの副効用もあります。しかし、ホルモン量が少ないため服薬開始時期によっては出血が抑えきれない可能性があります。
また、予定の直前になってから月経をずらそうとすると遅らせることしかできず、その場合吐き気などをこらえて薬を飲み続けないといけなくなるかもしれません。それを避けるためには、たとえば試験と1月の月経が重なる場合、12月の月経までに受診してもらえると、試験当日に服薬しないずらし方も可能になると思います。できるだけ良い状態で「その日」を迎えられるように、なるべく早い時期に婦人科で相談してください。
皆さんのこれまでの努力が最大限に発揮できるように、私たちもお手伝いしたいと思います。