奈良県医師会 山下和邦
体重減少には、「意図しての体重減少」と「意図しない体重減少」があります。今回は、意図しない体重減少についてお話しさせていただきます。
意図しない体重減少とは、ダイエットやその他の方法で、体重を減らそうとしていない人に起こることです。
誰でも時間とともに体重が若干増えたり減ったりするため、一般的に、4~5㎏を超える減少、または小柄な人では、体重の5%を超える減少がある場合のみ、医師は懸念を抱きます。
そのような体重減少は、深刻な身体疾患、または精神障害の徴候であることがあります。体重減少に加え、基礎疾患による食欲減退、発熱、痛み、寝汗等の他の症状が現れることもあります。
■原因
多くの場合、体重減少は体が必要とする量より少ないカロリーしか摂取しないために起こります。
摂取するカロリーが少ない理由として、食欲の減退や、栄養吸収を妨げる病気があります。頻度は低いですが、より多くのカロリーを消費させる病気にかかっている場合もあります。
ときに、これらのメカニズムの両方が関与していることもあります。
例えば癌は食欲を低下させる傾向がありますが、同時にカロリー消費量を増加させるため、急激な体重減少が生じます。
重症度の高い長期の病気はほぼすべて、体重減少の原因となりえます。
しかし、これらの病気は通常、体重減少が起こる時期までには診断されています。食欲が亢進(こうしん)する場合のものと、食欲が減退する場合のものとに分けられます。
≪食欲亢進を伴うもの≫
- バセドウ病
- 糖尿病で血糖値が著しく高い場合
- 下痢が長い期間続く
≪食欲不振を伴うもの≫
- 精神障害(うつ病等)
- 癌
- 薬の副作用(痛み止めや骨粗鬆症の薬等の長期服用)
- 薬を指示以上に服用した場合
■評価
通常、これらの病気を鑑別するために、医師は徹底的な診療を行います。
注意すべき徴候としては、以下のものがあります。
- 発熱や寝汗
- 骨の痛み
- 息切れ、咳、喀血(かっけつ)
- 強い喉の渇き、排尿の増加
身体診察では、血圧をチェックし、発熱、心拍数の増加、呼吸回数等を確認します。
■検査
症状及び身体診察所見から、約半数の人では体重減少の原因が示唆されます。最終的に癌と診断されるケースも多くあります。
検査の内容としては尿検査、血液検査、心電図、胸部レントゲン、胃カメラ、大腸内視鏡検査、マンモグラフィー、超音波検査、胸部腹部CT検査―等です。
■治療
治療方針は病気ごとに異なります。
癌であれば、内視鏡治療で完治する見込みがあるのか、手術適応があるのか、手術適応が無いのか―で治療方針は異なります。
甲状腺機能亢進症であれば、甲状腺疾患の中でもさまざまな疾患があり、治療方針は異なります。
治療が困難である場合は、栄養サポートを考慮すべきであります。
■要点
数ヶ月にわたり、4~5㎏、または体重の5%を超える「意図しない体重減少」がある場合、注意する必要があります。
ぜひ、かかりつけの先生にご相談ください。