コロナ禍のこころのあり方

奈良県医師会 吉田 司

この2年ほどのコロナ禍で、私たちの生活は一変してしまいました。仕事帰りの同僚たちとの飲み会も、趣味の友達たちとの食事会も、長い付き合いの知り合いたちとの懇親会も、なかなかできなくなってしまいました。

日本の自殺者数は2019年までは毎年減少を続けていました。ところが、2020年には増加に転じてしまいました。特に、女性や若者の自殺が増えたのです。つまり、コロナ禍で孤独・孤立に陥り、気楽に友達と話す機会も減ってしまったのです。

こうした現実に愕然とした菅前総理は、2021年2月に当時の坂本大臣を呼び寄せて、内閣官房に孤独・孤立対策室を作るように命じました。60億円の予算をかけて早急に対策をたてることになりました。現在は、野田大臣がその先頭に立って、孤独・孤立対策に政府を挙げて取り組んでいます。

私の心療内科クリニックにも、コロナうつ、コロナ不眠、コロナ不安、コロナ不登校などで悩んでいる人たちが来ています。一人一人の話に耳を傾け、必要な治療を施しています。

現状の日本では感染者が減少しても感染対策の継続は必要でしょう。マスク、手洗い、消毒などはもちろん続けなければなりません。ホテル、レストラン、他の多くの施設でも、感染対策はきちんと取られています。

そうした状況の中で、私たち一人一人が、心の平安をどのように保っていけばいいのか悩ましいところです。

一つには、2~3人の少人数での会食をやってみればいいでしょう。きっと、いい気分転換になることでしょう。また、おうちでもできる手軽な趣味を見つける努力をするのもいいでしょう。ギターに挑戦したり、絵画を始めたりするのもいいでしょう。

これまでコロナ禍のデメリットばかり挙げてきましたが、サラリーマンやOLの方には、メリットを強調する人もいます。「毎日、片道1時間も2時間もかけて通勤していたのが、在宅でのテレワークに変わり、とても仕事が楽になりました」と喜んで話して帰られる人もいます。不登校だった生徒もオンライン授業になり、進学や卒業が危うかったのが、セーフになり万々歳と言って喜んでいます。

人それぞれに立場の違いがあり、一概にはコロナ禍がすべて不幸とも言えないかもしれません。

これからの社会は、コロナとの共存世界に突入します。医療体制の整備も大事だし、経済の維持も大切です。奈良県は観光立国です。観光客に安心して、どんどんと来てもらわなければなりません。

奈良県の荒井知事には、奈良県という大きな国のかたちを、これからもしっかりと作っていただきたいと心から思っています。奈良県と協力しながら、奈良県民の健康のために身を削る覚悟でやっていきたいと思っています。