足底腱膜炎

奈良県医師会 中垣公男

足底腱膜炎(そくていけんまくえん)とは、足の指の付け根から踵(かかと)まで、足の裏に膜のように張っている腱組織に炎症が起き、小さな断裂を起こして痛みをもたらす病気です(図)。

主に中高年者に発症しますが、若い世代やスポーツ選手にも発症します。土踏まずがない靴を履いたり、体重が増えても発症します。

症状の特徴は、歩き始めに踵や土踏まずのあたりが痛みます。安静にして、足底筋のストレッチ、痛み止め、漢方薬、湿布、インソール(靴の中敷き)で治療します。

ただし、痛み止めは長期間使用すると胃があれるなどの副作用が出る場合があるので、注意が必要です。漢方薬は副作用が少なく有効です。治りが悪い場合には、痛み止めの注射、体外衝撃波治療、内視鏡手術などが検討されます。

アキレス腱と足底腱膜は繋がっているため、アキレス腱のストレッチをしてふくらはぎの筋肉を伸ばし、足底腱膜の突っ張りを和らげます。また床にタオルを敷いて、この上に足をおいてタオルを足の指で引き寄せ、つまむように指を動かす運動(タオルギャザー)で足底の筋力を鍛えます。

歩行できない、仕事に支障が出るほどの強い痛みがある場合や上記治療を行っても症状が改善しない場合、ステロイド注射を行うことがあります。痛みのある部分に局所麻酔薬とステロイドを注射すると、しばらく症状が改善することが多いですが、痛みが再燃する場合も少なくありません。注射で一時的に症状を改善させるだけですので、その間にストレッチなどリハビリを行わなくてはなりません。また、注射を繰り返し行うことは、組織を痛め、長期的には症状を悪化させる場合もあります。

上記のような、従来の一般的な治療を受けても症状が改善しない患者さんには、体外衝撃波治療を行います。これは最新の先端医療ですが、腱が骨についている部分の障害を改善します。皮膚の上(体外)から、繰り返す圧力波である衝撃波を照射する治療方法です。手術と違い、傷跡が残らない、切らない治療のため副作用はほとんどありません。実施中は衝撃を加えるため、痛みを少し伴います。我慢できる範囲に衝撃波の強さを調整します。時間は1回5~10分くらいで、数日の間隔を空けて何度か繰り返します。

それでも治癒しない場合は、細い内視鏡を使って踵にできた腱膜の付着にできた棘(骨棘:こつきょく)を切除すると痛みが軽快する場合があります。

足の裏に痛みがある方は、ぜひ整形外科を受診してください。

 

(図)足底腱膜炎