奈良県医師会 前田純宏
性感染症は多種多様で、流行している病気や、感染する体の部位、効く薬、が5年も経つとがらりと変わってしまいます。流行に対応して予防・診断・治療をすることが、患者様も医師も必要です。
以下、現代の性病の特徴を申し上げます。
◎多様な症状
①尿道・膣(ちつ)の膿(おりものの変化を含む)や違和感・痛み
「淋菌(りんきん)」・「クラミジア」の感染を疑います。以前は陰部の診察が必要でしたが、男女共に尿の精密検査だけで診断できるようになりました。1週間以内の飲み薬や、1回の点滴で完治します。
②陰部の湿疹、痒み、痛み
外見の異常だけで痛みや痒みが無い場合にむしろ「梅毒」が心配です。神経痛を伴った湿疹や水疱(ほう)は「性器ヘルペス」を疑います。これらは外見の特徴や採血によって診断されます。
③陰部のイボ(できもの)
尖(とが)ったイボの集合が特徴的な「尖圭(せんけい)コンジローマ」といわれるウイルス病で、痒み・痛みが無いためすぐに受診しない方が多いのが問題です。女性の場合は子宮頸がんに悪化する可能性もあります。塗り薬・焼灼(しょうやく)・切除が主な治療法ですが、数が増えるほど治療が半年以上など長期化するので、イボが小さく少ないうちに受診するのが望ましいです。
◎梅毒の流行
昭和60年頃の大流行後に日本では減少したため、現在は梅毒の診断経験のある医師が少なく、しかも治療しなくても初期の陰部の症状(しこり、潰瘍〈かいよう〉)が一旦消えてしまい、数ヶ月後に全身症状となる特徴があるため、見逃されて重症化する梅毒が増えています。
血液検査により正確に診断され、ペニシリンにより確実に治りますので、疑いがある時は従来の梅毒のイメージを怖がらずすぐに受診することが望まれます。
◎喉の性感染症
若い人や風俗で口と性器の接触による性行為が流行しているため、喉を媒体とした性病が非常に増えています。その大部分は女性の口と男性の性器の接触で、喉の症状がほとんどないために放置されている事が多く感染が続き広がっています。
特に淋病・クラミジアの患者本人と口で接触したパートナーに関しては、喉の精密検査が必要です。喉の性病検査に対応できるか泌尿器科や耳鼻科にあらかじめ確認の上、受診してください。
予防のためには口と性器の接触を避けるか、口との接触でもコンドームを着ける必要があります。
◎「治った」自己判断は危険!パートナーの検査治療も忘れずに
性感染症になっても自覚症状が無い人、症状が軽く放置している人、1回目の治療で治ったと安心して再検査の治癒判定を受けない人が、性感染症の感染源になります。「自覚症状が消えたので治った」と自己判断せず、治療後の受診で再検査を受け医師から治ったと判定され、さらにパートナーが感染していないか、治ったかを確認してから、安全な性行為をするようにしましょう。