中高年男性の疲れの原因〜もしかしたら男性更年期障害かも

奈良県医師会 植月祐次

▶その疲れ、老化だけではないかもしれません

中年以降の男性で「最近疲れやすくなった」「眠れない」「イライラする」「突然のほてりや発汗がある」―などのお悩みがある方は多いと思います。

コロナ禍で日常生活が大変な中、心身ともに不調をきたす中高年男性が増えています。「老化かな」と考える方も多いと思いますが、意外な病気が隠れていることがあります。

▶男性にも更年期障害は存在する

閉経前後の女性の更年期障害は有名ですが、男性にも更年期障害が存在します。

通常、男性ホルモン(テストステロン)は20歳ごろにピークになり、40代以降からゆるやかに低下します。しかし、加齢に加えてストレス、疲労、睡眠不足などが影響して、男性ホルモンが極端に低下すると“男性更年期障害”を起こす事があります。

男性ホルモンは筋肉や性機能に働くだけでなく、認知機能や集中力、判断力のような精神機能にも関係する、とても重要なホルモンです。

▶男性更年期障害の症状

男性ホルモンが低下するとED(勃起障害)のような男性機能の低下だけでなく、のぼせ、多汗、倦怠(けんたい)感、筋肉や関節の痛み、筋力低下、骨密度低下、頭痛、めまい、耳鳴り、頻尿などの身体の不調と不眠、無気力、イライラ、集中力や記憶力の低下などの精神の不調をきたします。

自覚症状だけでうつ病などの精神疾患と鑑別することは困難ですが、男性更年期は男性ホルモンの低下によるものなので、上記症状に加えて男性ホルモンの低下が必須条件になります。

▶男性更年期障害の検査

検査は“AMSスコア”という身体症状と精神症状の質問票に記入することと、血液検査による男性ホルモンの数値の測定です。質問票で自覚症状が基準を満たし、男性ホルモンが基準値を下回っていると男性更年期障害と診断します。

▶男性更年期障害の治療

治療は軽症の場合は“補中益気湯(ホチュウエッキトウ)”などの漢方薬の内服と生活指導を行います。自覚症状が強い場合や男性ホルモンの数値がかなり低い場合は“男性ホルモンの補充療法”を行います。

男性ホルモン補充療法は、男性ホルモンそのものを2から4週ごとに注射で直接投与します。

また、日常生活では「適度に運動をする」「太陽の光を浴びる」「バランスの良い食生活をする」「しっかりとした睡眠を心がける」―などが大切です。ストレスのかかりにくい生活が望ましいですが、なかなか難しいことが多いと思います。なるべく趣味や生きがいを見つけてストレスを解消してください。

▶男性ホルモンの減少は様々な病気と関連する

男性ホルモンが低下すると、男性更年期障害だけでなく糖尿病や肥満などの生活習慣病になりやすくなるという報告や、骨粗鬆(こつそしょう)症、心血管障害を起こしやすくなるといわれています。

また、男性ホルモンの減少は認知症やサルコペニア(筋肉が減少し、身体の機能が低下した状態)にも関連し、男性ホルモン値の高い男性の方が長寿であるという報告もあります。

男性更年期障害が気になる中高年の男性がおられましたら、近隣の泌尿器科にご相談ください。