脊椎椎体骨折

奈良県医師会 瀬戸靖史

背骨の椎体と言われる部分(体を支える大切な部分)の骨折で、前方部分が潰れくさび形に折れることが多く「圧迫骨折」とも呼ばれます。

骨粗鬆症が原因となっていることが多く、高齢女性の比較的軽い外傷(尻もちなど)での発症が多くみられます。安静にしていたら痛くない。寝起きや立ち上がる時が痛い。立ってしまえば歩ける—転倒後にこのような痛みが生じた場合は早期に受診をお勧めします。

レントゲン検査で骨の形を確認するのですが、最初のレントゲン検査で骨折がわからないこともしばしばあります。間を置いて、もう1度レントゲンを撮って見比べたり、MRI検査をして診断がつく場合もあります。

骨折した骨が、更に潰れないようにすること、また、寝たきりにならないようにすることが重要です。コルセットでしっかり固定し、折れた骨に負担をかけずに少しずつ動けるようにしていきます。重たい物を持ったり、体をねじったりすることは避けていただきます。

骨折している部位は、痛みを感じる所よりも頭側にあることが多いです。

また、前かがみの姿勢(お辞儀の姿勢)になることで、更に骨が潰れてしまい、腰が曲がってしまいます。そのため、コルセットは長いものが使われます。

痛みは1か月ほどで軽減しますが、折れた骨がある程度の強度になるには2~3か月かかります。痛みが取れたから、とコルセットを外してしまうと、骨が徐々に潰れていったり、痛みが取れなくなったりします。多くはコルセットで治癒しますが、骨がくっつききらなかったり、痛みが残る場合は手術的な治療を要する場合があります。

1度脊椎骨折を起こすと、他の脊椎も潰れやすくなります。また、高齢者が寝たきりや要介護状態になる原因の第4位は骨折・転倒です(認知症、脳卒中、老衰に次いで第4位 厚生労働省 国民生活基礎調査より)。

骨折が治った後も、骨粗鬆症の治療を継続して受けていただくことをお勧めします。