次世代のために風疹ワクチンを打ちましょう

奈良県医師会 丸山祥代

2月4日は風疹の日。

「風疹?流行ってるなんて最近聞かないし、もうかからないでしょ」―そんなふうに思っていませんか。

国内での発生例はいったん減っていましたが、近年は海外で感染して帰国する輸入例がみられるようになりました。もともと感染力の強いウイルスなので、患者1人から5~7人に広がります。症状も典型的な発熱や発疹だけでなく無症状の場合もあり、知らずに周囲へ伝染させていく危険性があります。そして、おそろしいことに妊娠初期に妊婦が風疹にかかると、胎児が「先天性風疹症候群」という障害を起こすことがあるのです。

これは、抗体免疫を持っていない人たちの話です。今の子どもたちは幼児のうちにMRワクチン(はしかと風疹の混合ワクチン)を2回接種するので、免疫を獲得していることが多いです。ですから子どもたちの間で風疹が流行することは少ないでしょう。しかし、1回接種であった年代(昭和37年~平成元年度生まれの女性、昭和54年~平成元年度生まれの男性)や、そもそも接種がなかった年代(昭和54年以前生まれ)の方々は免疫を持っていない可能性が高いです。ちょうど社会的活動も活発な世代ですから、仕事でもプライベートでも人との交流が盛んです。想像してみてください。知らないうちに自分に感染していた風疹ウイルスが、レストランや電車で偶然隣の席にいた女性に襲いかかっていったら・・その女性が実は妊娠していて、まだ気づいていない時期だったら・・。

その時期(妊娠1~2か月)に風疹にかかった場合、先天性風疹症候群の発症率は35~50%といわれています。2~3人に1人の赤ちゃんの目や耳を奪ってしまう、こんな怖いことはありません。

これらを防ぐ方法があります。それがワクチンです。風疹はワクチン接種で95%という高確率で免疫を得られるといわれています。みんなが免疫を得ることで風疹が流行することは防げます。

 

▶妊婦健診で風疹抗体価が低いと言われたお母さんへ

ご出産おめでとうございます。「妊娠中は風疹感染しないように」と、不安なこともあったと思います。かわいい赤ちゃんに会えましたね。この幸せを次の妊婦さんたちにも味わっていただきましょう。次のお子さんが欲しい方はもちろん、妊娠の予定はない方も、周りの「未来のお母さんと赤ちゃん」を守るためにはワクチンが有効です。今の気持ちを忘れないうちに、育児であわただしくなってしまわないうちに、産後すぐにMRワクチンを接種しましょう。そして赤ちゃんには、1歳になったらMRワクチンを忘れずに接種させてあげましょう。

▶風疹抗体価が低いと言われた妊婦さんのご家族へ

妊娠中はワクチンが打てません。みんなで妊婦と赤ちゃんを守るため、ご家族は積極的にワクチンを接種しましょう。自治体によっては接種や抗体検査に助成が使えることがあります。

▶特に妊婦さんとかかわりのない方へ

イマイチ必要性に実感が持てないと思います。ご自身の健康のためだけでなく、未来の赤ちゃんが健やかに生まれてこられるようにどうぞ抗体検査やワクチン接種をお願いします。

 

新型コロナウイルス感染症が拡大したことで「自分だけでなく周囲のためにもワクチンが重要」という理解はずいぶん進んできたと思います。次の世代を守ってあげられるのは、今生きている私たちです。あなたの一歩は大きな力になります。「風疹ゼロ」へのご協力をどうぞよろしくお願いいたします。