足関節外果剥離骨折 ~子どもの足首の捻挫は要注意~

奈良県医師会 瀬戸靖史

子どもの成長は頼もしい限りで、小学校に入るくらいになると動きも活発になり、怪我をして帰って来られることもあるかと思います。放っておいても勝手に治ってしまう怪我もありますが、気を付けるべき怪我もあります。関節周囲の怪我、特に足首は要注意です。

大人はくるぶしの硬い部分は全て骨ですが、お子さんは硬く触れている部分も実は一部軟骨が残っており、大人に比べて弱い構造になっています。成長と共にしっかりした骨に変わっていきますが、大人と同じ骨に成熟するのは男子で17歳前後、女子で15歳前後といわれています。

足首の両くるぶしの骨と足の骨との間には靭帯(じんたい)と呼ばれる強い組織があり、足首が前後に動かせる一方で、左右にぐらつかないようにしています。

足首を内側や外側に捻じるような強い力が加わり、靭帯が損傷したり切れたりした状態がいわゆる捻挫ですが、お子さんの場合は未だ骨が弱いため、靭帯よりも靭帯がへばり付いている骨が剥(は)がれてしまう場合があります(剥離<はくり>骨折)。小学生中学年くらいまでが特に要注意です。

このタイプの骨折は治りにくく早期から長期間の固定が必要になりますが、症状が捻挫と極めて似ていること、この部分の骨折は歩行が可能であること等から受診が遅れる傾向にあります。また、軟骨成分の多いこの部位は骨折がレントゲン検査では写りにくく、初回の診察でははっきりしなかった骨折が治療経過中にわかることもあります。そのため、剥離骨折が疑わしい場合はレントゲン検査で骨折が確認できていなくても、初期固定をして経過観察することもあります。しっかりとした治療をしなかった場合、関節のぐらつきが残って捻挫しやすくなったり、骨の破片(これも成長と共に大きくなることがあります)が刺激して痛みが出たり、中学、高校とさらに活発な運動をする時期に支障を来(きた)してしまう恐れがあります。

「自転車の後部座席に乗せていたお子さんの足が車輪に巻き込まれた」「サッカーをしていて足首を内側に捻じって転倒した」ーそのような時は捻挫と早合点されず、せひ、お近くの整形外科医にご相談いただくようお勧めします。