奈良県医師会 植月祐次
「血圧が高いので内科を受診する」「骨折したので整形外科」「妊娠したので産婦人科」―皆さんが病院を受診するときに、どの科を受診するか迷うこともあるかと思います。
最近では「インターネットで症状を検索して決める」という方もいるかもしれません。基本的には自覚症状やその部位で受診するかが決まることが多いですが、小児科や産婦人科のように年齢や性別で決まることもあります。
それでは泌尿器科はどんな時に受診したら良いのでしょうか?
「前立腺肥大症で近所の泌尿器科に通院している」「膀胱炎で泌尿器科を受診した」「泌尿器科で前立腺癌の手術をした」―ご家族の中に泌尿器科を受診している方がいるかもしれません。
最近でも、お笑いコンビのサンドウィッチマンの伊達みきおさんに膀胱癌が見つかったことや、天皇陛下が前立腺癌の精密検査を受けられたことが話題になりましたし、上皇陛下が前立腺癌の治療をされていることは、皆さんご存じでしょう。
今回は泌尿器の病気や泌尿器科についてお話しさせていただきたいと思います。
▶泌尿器科はどこを診る
泌尿器科は、泌尿器と男性生殖器を診ます。泌尿器とは、尿に関わる臓器である腎臓、尿管、膀胱、前立腺、尿道を指し、男性生殖器は陰茎、陰のう内容(精巣など)です。
また、腎臓の上にある副腎というホルモンを出している臓器も泌尿器科の対象です。
▶泌尿器科の代表的な病気
泌尿器科で診る一般的な病気としては、前立腺肥大症、過活動膀胱、尿失禁などの排尿の異常や、泌尿器の癌(前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、腎盂(う)癌、尿管癌、精巣癌、尿道癌、陰茎癌、副腎癌など)、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)、尿路結石、性行為感染症(梅毒、淋病、クラミジア尿道炎など)が中心です。子供の夜尿症(おねしょ)も泌尿器科で診療します。
また、最近話題の男性更年期障害も男性ホルモンの低下により起こるので泌、尿器科で診断、治療を行います。
▶泌尿器科によくある誤解
患者さんによくある誤解として「泌尿器科を受診すると、下着を脱いで局部を見せないといけない」ということがあります。声を大にして言いたいのは「性器そのものに異常がない限り、泌尿器科で下着を脱ぐことはありません」ということです。
女性によくある膀胱炎は症状と尿検査で判断します。解剖学的にみても腎臓は腰の後ろにありますし、膀胱、前立腺は骨盤の中にありますが、エコーで診る場合は臍(へそ)下と恥骨の間からエコーの機械を当てると検査をすることができます。
もちろん性器にできものができた場合や性器が赤く腫れた場合は、性器そのものを診察させていただきますが、受診される患者さんで下着を脱いで診察させていただくことは、あまり多くありません。特に女性の場合はほとんどありません。
▶泌尿器科医としてお伝えしたいこと
ご存じのように日本は高齢化が進んでいます。加齢とともに排尿障害や尿路感染症、泌尿器の癌のリスクは高くなります。男性の癌の罹患率(癌になる確率)では、ついに前立腺癌が全ての癌の中で1位になりました。前立腺癌をはじめ泌尿器癌は、早期発見すればきちんと治すことができます。尿路感染症は高齢の方がかかると、重症になる可能性もあります。排尿障害も治療すれば今より良くすることができます。また、梅毒、尿道炎をはじめとする性感染症は、きちんと治療すれば治る病気です。
少し行きにくい診療科かもしれませんが、泌尿器に気になるところがあれば、お近くの泌尿器科にご相談いただければ、悩みが楽になると思います。