上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

奈良県医師会 中垣公男

この病気は、年齢とともに固くなってきた肘(ひじ)の外側の筋肉、短橈側手根伸筋(たんとうそくしゅこんしんきん=上腕の骨と指の骨をつなぐ筋肉)が、上腕の骨に付着している部位(起始部)で障害されて生じます(図)。

この筋肉は手首を伸ばす働きをしており、テニス愛好家がバックハンドストロークのしすぎでこの病気になることが多いので、通称「テニス肘」と呼ばれています。

肘の使い過ぎによって肘関節に痛みと炎症が生じた状態で、物をつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。

以下の3つの検査で、肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたら診断できます。

1.トムゼンテスト

患者さんには、肘を伸ばしたまま検者の力に抵抗して手首(手関節)を伸ばしてもらう。

2.チェアーテスト

患者さんには、肘を伸ばしたまま手で椅子を持ち上げてもらう。

3.中指伸展テスト

検者が中指を上から押さえるのに抵抗して、患者さんに肘を伸ばしたまま中指を伸ばしてもらう。

 

●治療法

一番大事なことは、原因となる手の動きをやめて安静にすることです。スポーツや手をよく使う作業を控え、湿布や外用薬を使用し鎮痛剤を内服します。

手首や指のストレッチをこまめに行います。筋力トレーニングなどのリハビリを行います。温熱療法や近赤外線照射、干渉波治療などの物理療法を行います。

肘の外側に局所麻酔薬とステロイドの注射をします。注射後6か月以内では有効ですが、6か月以後は効果が少なくなります。

多血小板血漿(けっしょう)(PRP)を注射する場合もあります。PRPとは多血小板血漿(Platelet Rich Plasma)のことで、自分の血液を採取し、専用の機械を使用して濃縮した血小板のみを抽出します。

血小板には組織修復を促進する能力が含まれており、患部に注入することで治癒を促します。しかし、この方法は限られた施設でしかできません。テニス肘用のバンドも有効です。

 

○予防法

予防する方法としては、テニスをする場合はガットを緩く張ります。運動前に腕のストレッチングをし、運動後にはアイシングします。

保存療法を行っても治りにくい場合に手術することもあります。

 

●手術療法

テニス肘に対して行う主な手術としては、「腱(けん)切離手術」と「肘関節鏡下手術」があります。

腱切離手術は、炎症を起こしてしまっている腱を切除する手術です。肘関節鏡視下手術は、肘の中にカメラを入れて肘関節の中を観察しながら、傷んでいる組織を取り除く手術です。

短橈側手根伸筋の付着部(肘関節外側)を関節鏡で見ながら骨の付着部から切り離すと、付着していた部位に生じる機械的刺激がなくなり炎症が起こりにくくなります。

また、肘関節外側にある肥厚した滑膜が肘関節の曲げ伸ばしの際にひっかかる場合は、切除してひっかかりがないようにします。

肘の痛みが続く方は、ぜひ近くの整形外科を受診してみてください。

 

(図)
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