健康長寿の秘訣は腎臓にあり―慢性腎臓病(CKD)とはどんな病気?どうなったらCKDなんですか?―

奈良県医師会 赤井 靖宏

 みなさんは病気がどのように起こるとお思いですか?多くの内臓の病気、特に「生活習慣病」と呼ばれる病気はどのように発生するのでしょうか?

ちなみに、心臓病、脳卒中、がんなど、日本人の多くの方が患う病気が「生活習慣病」です。生活習慣病という名前から、これらの病気は生活習慣が悪いことだけで起こると思われがちですが、そうではありません。多くの場合、生活習慣病は、その人が持つ年齢、性別、体質など「病気になりやすい因子」に、喫煙、食べ過ぎ、大気汚染などの「環境因子」が加わって発症すると考えられています。

年齢や体質は変えることが難しいので、生活習慣病にならないためには、「環境因子」をコントロールすることが重要です。

生活習慣病にならないように考えるとき、実は「腎臓」が大事なポイントです。多くの生活習慣病が腎臓を悪くするため、腎臓を護ることが、生活習慣病にならずに健康長寿を達成することにつながるからです。

生活習慣病から起こる腎臓病の多くは、「慢性腎臓病(CKD シーケイディー)」と呼ばれる病気です。CKDは、今や日本人成人の8人に一人が患う病気とされ、まさに「国民病」のひとつです。

CKDはどんな病気でしょうか? CKDは、1)尿に異常がある、特に、たんぱく質が尿に漏れている(たんぱく尿)、2)腎臓の働き(腎機能)が低下しているーのどちらか、あるいは両方が続いている場合をいいます。

CKDになるとどんな症状が出るのでしょうか? 実は、CKDは病気がかなり進むまで症状がない病気です。したがって、尿検査や血液検査をしないとCKDになっているかどうかわかりません。

毎年健診を受けて、自分が知らぬ間にCKDになっていないか確認してください。CKDはいったんなると治りにくい病気ですが、早く発見すると進行を遅くすることができます。

CKDはどのように診断されるでしょうか? そう、尿検査と腎機能検査ですよね。あれ、腎機能ってどうすればわかるのでしょうか。

腎機能は、血液検査で測定する「クレアチニン」の数値から判定します。クレアチニンの数値から、「推算糸球体(すいさんしきゅうたい)ろか値」を計算します。「推算糸球体ろか値」は少し難しい言葉ですので、これの英語の略語「eGFR(イージーエフアール)」で覚えてください。健診で採血すると、結果の用紙にeGFRが記載されています。eGFRは、100が正常と覚えてください。例えば、eGFRが50になると腎機能は正常の半分ということです。

最近になって、CKDの進行を遅らせるお薬がでてきました。これらのお薬は、CKDの早期から飲まないと効果が十分に発揮されません。CKDを早期発見するために、ぜひ健診などを活用してください。

次回は「CKDにならない『よい生活習慣』について」、みなさんと一緒に考えたいと思います。