健康長寿の秘訣は腎臓にあり②―慢性腎臓病(CKD)にならない「よい生活習慣」とは?―

奈良県医師会 赤井靖宏

CKD(慢性腎臓病)やその合併症の予防には、「よい生活習慣」を持つことが大切です。ところで、よい生活習慣は本当に健康長寿に関連するのでしょうか。

2018年に報告された研究結果によると、1)たばこを吸わない、2)肥満ややせすぎにならない、3)運動習慣を持つ、4)健康的な食事をする、5)適度なアルコール摂取―の5つの生活習慣を実践すると、しない場合に比べて50歳からの寿命が、男女ともに10年以上伸びることが報告されました。

よい生活習慣は、健康寿命を伸ばすキーポイントなのです。みなさんの中には、「いまさら言われてもな~」と思われる方がおられると思います。しかし、生活習慣改善に遅すぎはありません。

また、みなさんには大切なお子さん、お孫さんや若いご友人がおられます。このようなまだお若い方にもぜひ健康な生活習慣をお話ししていただき、世代を超えて健康長寿を目指していただきたいと思います。

CKDの合併症に最も関連する生活習慣は「喫煙」です。たばこを吸わない、あるいは禁煙することが重要です。

「たばこの本数を減らしている」とおっしゃる方もおられますが、1日1本の喫煙でも心血管病(心筋梗塞や脳卒中)になるリスクは大きくは減りません。このため、たばこはスッパリやめることが重要と考えられています。

また、「すでに長らく喫煙しているから、今から禁煙しても意味がないのでは」と考えられる方がおられるかもしれません。このような長年の喫煙でも、禁煙すると5年以内に心血管病発症のリスクが減ります。したがって、長く喫煙されている場合でも、できるだけ早く禁煙することが大事です。

次に「運動」についてです。運動がよいとはわかっているが、なかなか運動を習慣的にできない方が多いのではないのでしょうか。

過去の研究では、1日10分くらいの運動をするだけでも、何もしない場合に比べ、何らかの原因で亡くなるリスクが2割程度減ることがわかっています。少しでも体を動かすことを考えていただきたいと思います。

また、運動が苦手な方には、日常生活活動でエネルギー消費を増加させる方法があります。できるだけ立つことを意識する(家の中や電車で座らないなど)▷階段を使う▷歩く時には早く歩くようにする―など、日常生活の中でエネルギー消費を増やすことを心掛けましょう。

最後に、食事コントロールもよい生活習慣のポイントです。みなさんは、「間食はだめ」とか「甘いものは控えめに」など、すでにいろいろ気を付けておられると思います。

そこで今回は、少し違った観点での食事療法をご紹介したいと思います。

現代は、多くの方が食べ過ぎていると思われます。食べ過ぎを防ぐためには、「食べない」ことがポイントです。食べないといってもお食事3食は規則正しく食べてください。それ以外はお口に何も入れないようにしてほしいと思います。ここが「我慢」です。

「食べない」ためには、お菓子、アイスやジュースなど、食べなくてもいいものを「買わない」ことも重要です。また、外食時には、余分に頼まず「残す」勇気も持っていただきたいと思います。

1日1回くらいは我慢(「1日1我慢」)して、食べない、買わないようにしましょう。「腹七分」で飼育した猿は、何でも好きに与えた猿より病気になりにくく、長生きするとの研究があります。昔の人が「腹八分」と言っていたのは深い意味があるのかもしれません。

次回は、「基礎疾患がある方のCKD予防」についてお伝えします。