健康長寿の秘訣は腎臓にあり③―基礎疾患がある場合に慢性腎臓病(CKD)にならないためには?―

奈良県医師会 赤井靖宏

今回は、基礎疾患がある方のCKD(慢性腎臓病)予防について考えてみましょう。

「基礎疾患」は、新型コロナウイルス感染症蔓延の中でよく使われる用語になりましたが、かかりつけ医や病院などでお薬をもらったりして治療を受けている病気のことです。CKDの原因になることが多い“3つの基礎疾患”についてみてみましょう。

まずは「メタボ」です。メタボは正式には「メタボリック症候群」という病気ですが、本稿では「メタボ」と呼ばせていただきます。

メタボは内臓脂肪の蓄積が基本にあり、血圧、血糖値やコレステロールなどが少し高くなる病気です。特に内臓脂肪の蓄積は、健康に及ぼす影響が最も大きい因子です。日本人、特に日本人男性は、メタボが多く発症すると考えられています。

メタボを予防するためには、食事や運動に注意して内臓脂肪がたまらないようにすること、つまり「ぽっこりお腹」にならないようにすることが重要です。食事や運動の注意点については後ほど述べたいと思います。メタボはCKDの原因になります。メタボや肥満傾向の方は、一刻も早くメタボを解消してCKDになるリスクを減らすことが重要です。

次に「高血圧」です。「30歳以上の日本人男性の約60%が高血圧である」と言われるほど、高血圧は多い病気です。高血圧になった場合は、できるだけ早く血圧を下げることが重要です。「血圧の薬をのむとやめられなくなる」と思ってのまない方がおられるのですが、血圧の薬は早く始めると、減らしたりやめたりできる場合があります。

逆に、高血圧が進んでしまうと薬はどんどん増える場合が多いです。残念ながら、日本人で高血圧の治療を適正に受けておられる方は、高血圧を持つ方の1/3以下であるとされています。

血圧が高い状態が続くと腎臓に負担がかかり、次第に腎臓が傷んできます。高血圧と言われたら、できるだけ早くお薬をのんで血圧を下げることが腎臓や血管を護るために大切です。

基礎疾患の最後に、「糖尿病」についてみてみましょう。糖尿病は近年、患者さんの数が大変増えている病気です。今や「日本人の10人に1人が糖尿病を患っている」と言われます。糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、血糖値がある程度高くなっても症状はほとんどありません。そこで、糖尿病を早く発見するためには、毎年健診を受けることが大事です。

糖尿病になりやすい体質をお持ちの方でも、食事や運動に気を付けると糖尿病の発症を予防することができます。健診などを受けず、知らぬ間に糖尿病になって血糖値が高い状態が長く続くと、腎臓が傷んでCKDになりますので注意が必要です。

糖尿病によるCKDを予防するためには、糖尿病になったらできるだけ早くお薬をのんで血糖値を正常にすることが重要です。高血圧と同様に、糖尿病も早く治療を開始するとお薬を減らしたりやめたりすることができますので、早めの糖尿病治療をお勧めします。

また、糖尿病で腎臓が傷み始めても、早期であれば元に戻すことができます。この点からも、早期診断・早期治療が大切です。

次回は、CKDになると何が困るのかについて考えてみましょう。