健康長寿の秘訣は腎臓にあり④―慢性腎臓病(CKD)になると何が困るの?―

奈良県医師会 赤井靖宏

今回は、慢性腎臓病(CKD)になると何が困るのかについて考えてみましょう。

健診などで「腎臓が悪い」と言われると、ほとんどの方が「透析は大丈夫ですか?」と問われます。確かに、腎臓がひどく悪くなると透析や腎移植が必要になりますが、腎臓が悪いすべての方で、透析などが必要なほど腎臓が悪くなるわけではありません。

しかし、「透析」という言葉によくない印象を持つ方が多いため、「透析が心配」ということになるのかもしれません。

日本は、非常に質のよい透析が受けられる国のひとつですので、透析になったとしてもそれほど心配はありません。しかし、例えば、血液透析では週3回病院に通わないといけませんので、やはり透析にならないにこしたことはありません。

でも、CKDになった方は透析だけを心配していればよいのでしょうか。いえ、違います。実はCKDになった方の多くが、透析よりも心配しなければならない病気があります。それが「心血管病」です。腎臓が悪くなった方では、透析を必要とされる前に心血管病になる方が多いのです。

心血管病は、心筋梗塞などの心臓の病気や脳卒中などの脳の病気です。どうやら、腎臓が悪くなると血管が動脈硬化を起こして硬くなり、心臓を栄養する冠動脈(かんどうみゃく)が狭くなったり詰まったりして、狭心症や心筋梗塞が起こります。

また、脳に血を送る首の動脈(頸動脈<けいどうみゃく>)や脳の中の動脈が動脈硬化を起こすと、脳の血の流れが悪くなり、脳梗塞などが起こります。

心筋梗塞や脳梗塞は、いったん起こるとその後の生活に不自由をきたす場合があり、CKDを持つ方ではこれらの病気を予防する必要があります。

心血管病には予防法があります。生活習慣では、たばこを吸わない▷肥満にならない▷適度な運動をする―などが心血管病を防ぐことにつながります。

また、血圧や血糖値が高い場合には、一刻も早く血圧や血糖値を下げる治療を受ける必要があります。

さらに、コレステロール値の管理も重要です。特に、悪玉コレステロールと呼ばれる「LDLコレステロール」を基準範囲にすることが大切です。心血管病につながる生活習慣や病気を早期に改善することによって、CKDであっても心血管病にならない人生が可能です。

以前にも述べましたが、CKDをはじめ、メタボ、高血圧や糖尿病と診断された場合には、早めに適切な治療を受けることが重要です。

生活習慣病は、よくある病気であるため軽く見てしまいがちですが、知らぬ間にみなさんの身体をむしばみます。どんな病気もそうですが、ポイントは早期診断・早期治療です。早く治療を開始すると、いったんお薬を始めてもお薬の量を減らしたり、お薬をやめたりすることが可能です。

CKDでは透析だけでなく、心血管病もお忘れなく。

次回は、CKDの治療について考えましょう。