奈良県医師会 赤井靖宏
今回は、慢性腎臓病(CKD)の治療について考えてみましょう。
最近は、CKDの治療薬が開発され、みなさんにのんでいただくことができるようになりました。CKDの治療薬はほとんどなかったので、治療薬が開発されたことはビッグニュースです。
この薬は「SGLT-2阻害薬」という種類に属するお薬です。もともとは糖尿病のお薬として開発されたのですが、糖尿病だけでなく、なんとCKDにも効果があることが分かったのです。
このお薬は、CKDの中でも「尿にたんぱくがもれている、つまり尿たんぱくがある方に効果が高い」と考えられています。この薬を使うポイントは、できるだけ早い時期に薬を開始することです。腎臓の働きが大きく低下してからこの薬を開始したのでは、望ましい効果は得られません。早期にこのお薬を開始すると、出ていた尿たんぱくが出なくなったり、尿たんぱくの量が少なくなったりします。尿たんぱくが少なくなることは、それだけ腎臓が護(まも)られ腎臓が長持ちすることを示します。
「お薬に頼るだけではな~。何か自分にできることはないのかな?」と考えていただいている方もおられると思います。あります!実は、CKDにならないための「よい生活習慣」(本連載②『慢性腎臓病(CKD)にならないよい生活習慣とは?』参照)は、CKDの進行を遅くする効果もあるのです。
よい生活習慣をおさらいすると、1)たばこを吸わない、2)肥満ややせすぎにならない、3)運動習慣を持つ、4)健康的な食事をする―などです。
CKDの治療を受ける方は、これらの生活習慣について再度確認してください。また、お食事では塩分制限も大切です。普段から、お汁もの(みそ汁など)は控えめにする▷麺類のスープ・つゆはのまない▷醤油や味噌は減塩のものを使う▷塩辛いもの(梅干しや漬物など)は控えめにする▷塩味でない味付け(香辛料やレモン汁など)を活用する―などを心掛けていただければと思います。
これらを少しずつでも日々意識するだけで、塩分摂取量が3分の2くらいになる方が多くおられます。生活習慣の管理にはみなさんの協力が必須です。毎日の生活の中での少しの意識づけが、大きな結果(CKD進行の予防)につながるのです。
もし、かかりつけの医院・病院に栄養士や理学療法士がおられたら、食事や運動についてアドバイスを受けることもお勧めです。栄養や運動の分野は、科学的な研究がずいぶん進んできています。
あいにく、かかりつけの医院や病院にこれらのスタッフがおられない場合は、特定健診などのあとに行われる「保健指導」を活用するのもよいと思います。ただし、保健指導には受けるための条件がありますので、詳しくは保健所・保健センターや役場に問い合わせてください。
また、CKDの治療では血圧や血糖値のコントロールも大切です。適切な血圧や血糖値の維持はCKDの進行を遅らせます。CKDの治療は今まで述べたことを組み合わせて行われます。
「腎臓が悪い」とか「尿にたんぱくがおりている」などが続く時が、CKD治療のはじめ時です。「自分でできること」と「病院や診療所に相談すること」を組み合わせ、CKDが進行しないように注意しましょう。
みなさんは、どうしても「自分でできること」を重視されるかもしれませんが、生活習慣管理だけではCKD治療が不十分な場合がありますので、CKDと診断された場合は必ず医師の診療を受けてください。