湿布を正しく使えていますか?

奈良県医師会 米田正名

打ち身や腰の痛みがある時などに湿布を使用される方が多いと思います。手軽に使えて便利な湿布薬ですが、正しく使えているでしょうか?

 

【痛いときは冷やした方が良い?温めた方が良い?】

病院で診療をしていると、たびたびこの質問を頂戴します。

湿布が使える痛みは打撲(だぼく)や捻挫(ねんざ)などの怪我から、腰や膝などの慢性的な痛みまで、原因や治療法はさまざまです。

そのため、必ず冷やした方が良い、あるいは温めた方が良いとは言えず、正式な対応は医師の診察による判断に従っていただく必要があります。

しかし、すぐに病院に行けない場合もあると思います。一般に怪我による急性の痛みに対しては、患部が腫(は)れて熱を帯びていることが多いため炎症を抑える目的で冷やす方が良い場合が多く、痛みが慢性化して患部の動きが悪くなっている時は、血行を促進する目的で温めた方が良い場合が多いと言われています。

 

【冷湿布と温湿布どちらを使う?】

では、冷湿布と温湿布もその使い分けで良いのでしょうか?

漢字の印象から冷湿布は「冷やす」湿布、温湿布は「温める」湿布だと間違っている方が多いのですが、冷湿布には冷たさを感じさせるメントールが、温湿布には皮膚刺激で熱を感じさせるトウガラシエキス成分などが含まれています。

湿布に含まれる水分量で、貼ってすぐはどちらも冷たく感じますが、実のところ患部を冷やす、あるいは温める作用はありません。どちらのタイプの湿布も皮膚に接する面に消炎鎮痛(腫れを減らし痛みを鎮める)成分が含まれており、その薬効で痛みを改善している点では同じです。

従いまして、お好みでどちらのタイプの湿布も使用できますが、一般に温湿布のトウガラシエキス成分は刺激が強くヒリヒリする感触があったり、皮膚の弱い方はかぶれやすいことに注意が必要です。

急な怪我で腫れた患部の皮膚は大変敏感になっています。その際は刺激の少ない冷湿布を使用して、早めに病院を受診しましょう。

 

【湿布はいつ貼れば良いでしょうか?いつ貼り替えますか?】

湿布の入っている袋には「患部に1日1回」、もしくは「1日2回」と使用回数が表記されていると思います。病院から処方される湿布には「1日2枚まで」と使用枚数を厳格に制限している特殊な湿布も存在します。

貼り替え回数と使用枚数制限は袋の表記に従いましょう。ただし貼っている最中に強い痒(かゆ)みやピリピリする異常感覚が生じた場合は、かぶれていないか、予定の時間より早く湿布を剥(は)がして確認することが重要です。

貼り慣れた湿布なら貼ったまま就寝される方も多いと思いますが、使用開始して間もないうちは、患部の様子をみながら起きている時間帯に使用するようにしましょう。

また、入浴やサウナ風呂に入る時は血流が良くなることで、湿布から薬剤が急に体内へ多く取り込まれ、副作用が増強される可能性があります。あらかじめ湿布は外して入浴するように心掛けましょう。

 

【最後に】

湿布は正しく使用することで痛みの改善が期待できますが、症状が改善し難い場合は思わぬ疾患が潜んでいることもあります。その場合は必ず病院で医師の診察を受けてください。