奈良県医師会 丸山祥代
先日、県内の小学校で教員による盗撮事件という残念なニュースがありました。学校で最も信頼できる大人にあたるはずの「先生」によるものということは非常に残念です。被害に遭われた児童の心の傷が少しでも軽くなるように願ってやみません。
最近、子どもへの性暴力ということがとりあげられるようになり、以前よりも性暴力についての理解が深まっているように感じます。性暴力というと、いわゆるレイプのようなものを想像してしまいますが、同意のない性的な行為はすべて性暴力です。
痴漢や盗撮といった犯罪だけでなく、体を見せるように指示されたり、スカートめくりをしたりというようなものも含まれます。特に子どもは男女問わず、被害者になりうることも知られてきました。
これらは必ず、加害者が「下」に見ている人に対して行われます。立場が対等、あるいは上の者に対しては行いません。また、子どもは被害に気づきにくいことも多く、さらに狙われやすくなります。
相手が信頼される立場であれば「いやな気持ちにはなったけど偶然かも。あの人がそんなことをするはずがない」と自分を責めることもあります。
それでも勇気を出して被害を相談してくれたときの対応は非常に重要です。「信じてもらえなかった」という体験をさせてしまうと、今後子どもたちは被害を教えてくれなくなります。そうして自分だけに秘めておくと、子どもたち自身にも性に対する認知のゆがみができてしまい、問題行動の原因となることがあります。
他人を大切にできなくなると性加害を行うようになり、自分を大切にできなくなると不特定多数の性行動におよんだり、抑うつ症状が出たりするようになります。
負の連鎖を断ち切るためには、周囲の大人たちが正しい知識と対応を身につけなければいけません。また、子どもたちも人権意識に小さいころから触れていくことが必要だと考えます。
昨年から始まっている「生命の安全教育」をさらに深めて、すべての子どもたちが他者と豊かなコミュニケーションをとれる大人になれるように願っています。
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子どもたちへの性暴力への対応を学ぶ研修会を奈良県で開催します。
「性暴力予防教育の推進に向けて」(令和5年度奈良県性教育研究会研修会)
●日 時:令和6年3月25日(月)9時30分~16時30分
●場 所:やまと郡山城ホール(大和郡山市北郡山町)
●講 師:斉藤 章佳 氏、山口 修平 氏、池畑 博美 氏
●対 象:主に教職員、保育士・幼稚園教諭、児童福祉に関わる職種あるいはそれを目指す学生(他府県も可)
●受講料:無料
●問い合わせ:奈良県性教育研究会、メールアドレス(naraseikyouiku@gmail.com)
●参 加:要申込 → https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:afd7f8d2-4f47-4a48-a925-47a78551d05e