奈良県医師会 瀬戸靖史
外脛骨(がいけいこつ)とは、足の内側、内くるぶしのやや下方に認める過剰骨(一部の人にある余分な骨)で、約15%の人に認められます。多くの方は、骨が出っ張っているだけで痛みもなく無症状で、窮屈な靴を履かなければ運動や生活の障害になることはありません。
しかし、この過剰骨が後脛骨筋(ふくらはぎから足の内側、底側を走る筋肉で足のアーチを保持する筋肉の1つ)と舟状骨(しゅうじょうこつ:足の骨の1つ)に繋がる所にできるため、その周囲で炎症や損傷を来すと、痛みや偏平足(へんぺいそく)の原因になることがあります。
多くはスポーツなど動きが活発で、骨の成熟が不十分な小学校高学年~中学生で発症します。成人でも外傷を契機に発症することはありますがまれです。
原因は、急激で過度な運動や、足の捻挫(ねんざ)など外傷で外脛骨周囲に負荷がかかることによります。発症当初は骨の出っ張りを押さえると痛みますが、腫(は)れや発赤(ほっせき)はそれほど目立ちません。歩行や運動で痛みが出るようになります。
診断はレントゲン検査で外脛骨の有無、形状を確認します。軽傷であれば数週間の運動休止、消炎鎮痛剤や湿布薬で軽快しますが、無理に運動を続けていたり、また、形状(大きさ、舟状骨との繋がり具合)によっては、3~4カ月間の長期に治療を要する場合があります。
外傷を契機とした場合や、痛みが強い時は、ギプス等の外固定を行う場合もあります。後脛骨筋は足首を動かす働きもありますので、動きを制限して外脛骨が後脛骨筋で引っ張られる刺激を軽減させます。
また、足底板(インソール)と呼ばれる装具療法も有効です。前述のように偏平足を伴っている場合は、土踏まずを持ち上げて足のアーチを支えるように、足の形に合わせて足底板を作成し、外脛骨周囲への負荷を軽減させます。
多くの方は、これらの治療で軽快されます。また、骨が成熟する高校生頃には症状は出にくくなりますが、それまでは再発予防が必要になります。足のアーチを保持させるもう一つの筋肉は、足底筋と呼ばれる足の裏にある筋肉で、足の指を動かす筋肉です。足の指でタオルを握る運動、足指じゃんけん、裸足での生活などで筋力強化することが必要です。また後脛骨筋のストレッチも重要で、しゃがむような姿勢(膝も曲げる)でふくらはぎを伸ばします。運動後のアイシングも有効です。運動の後に違和感が生じたら、早めに対処して再発を防いでください。
強い痛みが続く場合、再発を繰り返し生活や運動に支障を来す場合は、手術的治療を行うこともあります。年齢、外脛骨の形態によって手術方法は異なりますが、外脛骨と舟状骨を繋げる手術(経皮的ドリリング術)、外脛骨を摘出して後脛骨筋を繋げなおす手術(摘出術)などがあります。
上手に付き合えば、運動も生活も普通に行えます。適切な治療を受けていただくためにも、足の内側が痛む場合は、早めにお近くの整形外科に受診していただくことをお勧めします。